第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

3 電波政策の展開


(1)電波政策概況

ア 電波の有効利用の推進
 新たな電波利用システムやサービスが進展し、今後も周波数に対する需要の増大が予測されている中、新たに利用可能な周波数を創出する「ホワイトスペース」の活用が世界的に注目されている。我が国においても、ホワイトスペースを地域コミュニティの情報発信等に活用することにより地域再生や新産業の創出など諸問題の解決につながると期待されている(図表5-2-3-1)。
 このため、総務省では、ホワイトスペース活用の実現に向けて積極的に取り組んでいるところである。
 具体的には、ホワイトスペースを活用したシステムの制度化やビジネス展開を促進するための「ホワイトスペース特区」を創設し、各地域の特性を活かした実証実験などを行っている。
 また、平成22年9月には、官民連携してホワイトスペース活用の全国展開を目指す「ホワイトスペース推進会議」12(会長:土居範久中央大学教授)を設立し、「ホワイトスペース特区」における成果を踏まえて、ホワイトスペース活用の実現に必要な環境整備やルールづくり等を検討しているところである。

図表5-2-3-1 ホワイトスペースの活用
図表5-2-3-1 ホワイトスペースの活用

イ ワイヤレスブロードバンドの実現に向けた取組
 総務省では、我が国における世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境を実現するとともに、増大する移動通信システムの周波数需要に対応するため、平成22年5月に「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の下に「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」を設置し、ワイヤレスブロードバンド環境の実現に向けた周波数の確保について検討を行い、同年11月にその結果を取りまとめ、公表した。
 主な取りまとめ内容は以下のとおり。
 [1]ワイヤレスブロードバンド向け周波数について、2015年までに300MHz、2020年までに1500MHz幅を超える周波数を新たに確保することを目標に設定
 [2]地上デジタル放送への完全移行等に伴い、空き周波数帯となる700MHz帯と900MHz帯の周波数割当てについて、諸外国における周波数の割当状況と整合性を図る観点から、700MHz帯及び900MHz帯をそれぞれ利用する割当方法とする等周波数割当の基本方針の策定
 [3]迅速・円滑な周波数再編を実現するため、既存システムの周波数移行に伴う費用を移行後の周波数を利用する者が負担することを可能とする新たな措置の整備
 総務省では、同取りまとめを踏まえ、携帯電話等用周波数の確保に際して既存システムの周波数移行を要する場合に、移行後の周波数を利用する者が既存システムの周波数移行に要する費用を負担することを可能とすること等を内容とする電波法の一部を改正する法律を第177回国会に提出し、平成23年6月に成立、公布されたところであり、今後、この法律に基づき、700/900MHz帯における迅速・円滑な周波数再編を実施していくとともに、ワイヤレスブロードバンド環境の整備に取り組んでいくこととしている。

ウ 電波利用料の見直し
 電波利用料制度は、電波監視等の電波の適正な利用の確保に関し、無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の費用(電波利用共益費用)を受益者である無線局の免許人等に公平に分担していただく制度であり、総務省では、平成5年4月の導入以来、少なくとも3年ごとに見直しを行っている。
 電波は有限希少な資源であるが、その利用ニーズは日々拡大しており、国民の利便性向上を図るためには、電波の有効利用を一層促進することが必要であるという観点を踏まえ、平成22年4月より、総務副大臣(情報通信担当)が主催する「電波利用料制度に関する専門調査会」を開催し、次期(平成23年度〜25年度)の電波利用料の見直しに向けた検討を行い13、平成22年8月、既存使途の歳出の効率化、電波の有効利用の一層の促進、電波利用料への電波の経済的価値の一層の反映を主な内容とする「次期電波利用料の見直しに関する基本方針」を公表した。
 さらに、平成23年1月には、同基本方針に基づき、新しい料額の算定について具体的な考え方をまとめた「電波利用料の見直しに係る料額算定の具体化方針」を公表した。
 これらを踏まえた電波利用料の見直し等を内容とする「電波法の一部を改正する法律」が平成23年5月成立したところである。
エ 周波数オークションの導入
 平成22年12月に策定した「光の道」構想に関する基本方針においては、「第4世代移動通信システムなど新たな無線システムに関しては、諸外国で実施されているオークションの導入についても、早急に検討の場を設けて議論を進める」こととされたところである。これを踏まえ、総務省では、平成23年3月より、周波数オークションの我が国での導入について、周波数オークションに関する現状分析、導入に際しての課題及び具体的方策等について検討することを目的として「周波数オークションに関する懇談会」を開催し、検討を行っているところである14


12 参考:「ホワイトスペース推進会議」:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/whitespace/index.html
13 参考:「電波利用料制度に関する専門調査会」:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/denpa_riyouryou/index.html
14 参考:「周波数オークションに関する懇談会」:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/syuha/index.html
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