第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第3章 「共生型ネット社会」の実現がもたらす可能性

コラム 地域SNSが人と人との協働を媒介し地域コミュニティの問題解決〜大津市の「おおつSNS」での取組〜


 ソーシャルメディアの媒介による協働の結果、地域コミュニティの問題解決に効果を発揮した事例として、平成20年に滋賀県大津市の地域SNS「おおつSNS」1の参加者有志が企画した「おおつのええもん・ええとこ携帯写真展」がある。
 これは、おおつSNS等を通じて大津市民に写真提供を呼びかけ、市民が自分の住んでいる街の日常的な風景や自然、文化、行事等の写真を携帯電話のカメラで撮る2ことや写真をきっかけにコミュニケーションをとることを通じて地元の良さを再発見し、郷土愛や地元意識を醸成することを目的とするものである。合併やベッドタウン化に伴う新住民の増加により市民にとっても知らない風景が増えていたこと、大津市が京都市と隣接していることにより地元への関心が必ずしも高くない状況があったこと等が背景にあったとのことである。写真はおおつSNS等に投稿され、応募作品約400点は、市内の公共施設で展示され、また、ポスターとして配布された。市民からは「写真を投稿する為に、車ではなく町を歩こうと思った」「日頃、見慣れた風景がきれいなものだった」という声があがったり、写真展を他のイベントに併せ開催し、野外展示やコンサートでのスクリーン投影を行ったりした。その結果、市民が大津市の魅力を再発見し、自分の住む町を好きになる効果があったとのことである3
 この事例は、ソーシャルメディアが媒介する協働の結果、地域コミュニティの問題解決という形で実社会にプラスの影響を与えたよい事例といえるだろう。


1 平成19年に大津市が設立し、運営している地域SNS
2 「みなが同じ条件で撮れる」携帯電話のカメラに限定することで、プロのみならず素人も応募するきっかけとなり、買い物途中、通勤途中といった様々な視点から見た大津の写真が集まったとのことである
3 この事例は、薄れつつある地元意識を醸成させるものとして、茨城県ひたちなか市等他地域での取組のモデルにもなっている
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