第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて
第1章 ICTにより国民生活はどう変わったか

(1)コミュニケーション行動の変容


ア 情報メディアの利用時間の変化

●平成22年には、コミュニケーションツールの上位が「通話をする」から「サイトを見る(パソコン)」に

 平成17年の全体シーンにおけるコミュニケーションツールの利用時間の上位は、「メールを読む・書く(携帯電話)」(15.65分/日)、「通話をする(固定電話)」(11.71分/日)、「メールを読む・書く(パソコン)」(11.65分/日)であったが、平成22年では、「メールを読む・書く(携帯電話)」(20.55分/日)、「メールを読む・書く(パソコン)」(19.73分/日)、「サイトを見る(パソコン)」(18.64分/日)となり、時間をかける行動に変化がみられる(図表1-3-1-1)。

図表1-3-1-1 情報メディアの利用時間
図表1-3-1-1 情報メディアの利用時間
平成22年の上位は、「メールを読む・書く(携帯電話・パソコン)」、「サイトを見る(パソコン)」
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「日本人の情報行動2005」1及び「2010年日本人の情報行動調査」2により作成)

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●固定電話での通話などの利用時間は減少。一方、メールの読み書きやサイトの閲覧の時間が増加

 コミュニケーションツールの個別の利用時間をみると、固定電話での通話やチャット・メッセンジャーの利用時間は減少している一方、メールの読み書きやサイトの閲覧、書き込み時間は増加している(図表1-3-1-2)。第2節で触れたように固定電話の契約数が減少傾向にあることにも表れているように、ICTが進展することにより、リアルタイムの音声コミュニケーションからメールの読み書きやサイトの閲覧・書き込みへ情報メディアの利用時間が移りつつあることが考えられる。

図表1-3-1-2 全体シーンでの情報メディアの利用時間の比較
図表1-3-1-2 全体シーンでの情報メディアの利用時間の比較
固定電話での通話などの利用時間は減少。一方、メールの読み書きやサイトの閲覧の時間が増加
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「日本人の情報行動2005」及び「2010年日本人の情報行動調査」により作成)

イ 年代による情報メディアの違い
 情報メディアの利用時間を年代別に比較すると、どのような傾向になっているのだろうか。平成17年と平成22年を比較した場合に増加している「メールの読み書き」、及び全体の利用時間の増加幅は大きくはなかったが情報発信行為としての「サイト書き込み」に着目して、年代別に分析する。

●メールの読み書きやサイトの書き込みに、10代・20代では携帯電話を、30代・40代ではパソコンを主に使う傾向

 メールを読み書きする時間について平成17年と平成22年での比較を年代別に見てみると、携帯電話では、特に20代で+17.42分と増加幅が大きい。また、10代及び20代では、いずれの年においても、他の年代と比べて利用時間が長い。一方、パソコンについては、携帯電話での傾向と異なり、特に40代で+20.06分と増加幅が大きく、30代や40代での利用時間が長い(図表1-3-1-3)。

図表1-3-1-3 全体シーンでの「メールを読む・書く(携帯電話・パソコン)」時間の年代別変化
図表1-3-1-3 全体シーンでの「メールを読む・書く(携帯電話・パソコン)」時間の年代別変化
携帯電話では、10代・20代が、パソコンでは特に40代が増加幅が大きい
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「日本人の情報行動2005」及び「2010年日本人の情報行動調査」により作成)

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 同様に、サイトへの書き込み時間について年代別に見てみると、携帯電話では、10代で+3.90分、20代で+3.68分と増加幅が大きく、10代・20代で利用時間が長い。一方、パソコンでは30代で+1.76分と増加幅が大きく、利用時間も30代・40代で長い(図表1-3-1-4)。

図表1-3-1-4 全体シーンでの「サイトに書き込む(携帯電話・パソコン)」時間の年代別変化
図表1-3-1-4 全体シーンでの「サイトに書き込む(携帯電話・パソコン)」時間の年代別変化
携帯電話では、10・20代が、パソコンでは30・40代が増加幅・利用時間ともに大きい
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「日本人の情報行動2005」及び「2010年日本人の情報行動調査」により作成)

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 メールの読み書きやサイトの書き込み等といった情報メディア行動について、10代・20代では携帯電話を、30代・40代ではパソコンを主に使う傾向がうかがえる。

●パソコン・携帯電話それぞれから利用している機能やサービスに大きな差はない

 情報メディアの利用のうち、特にコミュニケーション行動をみた場合、どのような傾向があるのだろうか。平成22年におけるパソコン・携帯電話それぞれから利用している機能やサービスの割合を比較すると、順位に多少の差はあるものの、利用されている機能・サービスに大きな差はない(図表1-3-1-5)。

図表1-3-1-5 パソコン・携帯電話別の利用機能・サービス
図表1-3-1-5 パソコン・携帯電話別の利用機能・サービス
パソコンと携帯電話との間で、利用されている機能・サービスに大きな差はない。
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「2010年日本人の情報行動調査」により作成)

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●年代別にみると、特に10代・20代における携帯電話からの利用が活発な傾向

 年代別に、パソコン、携帯電話のそれぞれで利用している機能・サービスをみていくと、パソコンは20代・30代が、携帯電話は10代・20代が他の年代に比べて閲覧・発信ともに利用が活発であることがわかる(図表1-3-1-6)。情報の受発信に着目すると、10代・20代においては、パソコン・携帯のいずれにおいても、SNSに書き込む割合が高い。特に10代・20代については、SNSについて、携帯電話からの利用が活発な傾向がある。

図表1-3-1-6 年代別インターネットの利用機能・サービス
図表1-3-1-6 年代別インターネットの利用機能・サービス
10代・20代において携帯電話からの利用が活発な傾向
(出典)総務省「ICTインフラの進展が国民のライフスタイルや社会環境等に及ぼした影響と相互関係に関する調査」(平成23年)
(「2010年日本人の情報行動調査」により作成)

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1 東京大学大学院情報学環編「日本人の情報行動2005」
2 東京大学大学院情報学環橋元研究室・電通総研「2010年日本人の情報行動調査」
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