第3部 情報通信の現況と政策動向
第5章 情報通信政策の動向

(1)Green of ICT・Green by ICTの推進


 総務省においては、「ICT産業のグリーン化」(Green of ICT)と「ICTによるグリーン化」(Green by ICT)の双方を柱とする「ICTグリーンプロジェクト」を推進している(図表5-4-7-1)。

図表5-4-7-1 ICTグリーンプロジェクト
図表5-4-7-1 ICTグリーンプロジェクト

 平成21年11月には、「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」において「ICTグリーンプロジェクト」を推進するためのシナリオとして、具体的プロジェクトを以下のとおり取りまとめた。
 ・ICTシステムの消費電力を抑制するための技術等の研究開発の推進
  ルーター等の機器やネットワーク全体の消費電力を抑制・低減するための技術の研究開発や大規模・効率的なCO2排出量削減が見込まれるICT関連技術の研究開発を推進
 ・データセンター等の省エネ化の推進
  電気通信事業者による自主的な取組を促すため、「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」の普及を促進
 ・スマートグリッドの導入推進
  スマートグリッドに関連する通信ネットワークシステムや通信プロトコルの技術仕様等を策定し、IETF、IEEE、OSGi、ITU等に提案
 ・環境負荷軽減効果の高い分野における「Green by ICT」の推進
  BEMS・HEMS23やITS等の分野を中心に、ICTによるグリーン化のモデルやICTによる省エネ効果の「見える化」を推進
 ・「環境×ICT」のグローバル展開の推進
  デジュール・デファクトの双方を視野に入れた環境関連分野のICTに関する国際標準化やICTによる気候変動に関する「緩和策」「適応策」双方について、ベストプラクティスや関連施策パッケージをAPEC等へ発信・提案する。また、環境負荷低減に資する我が国のICTシステムについて、インフラ・サービス等のトータル・パッケージとして海外展開を推進
 これらのうちGreen by ICT分野の取組例を紹介する。環境にやさしいまちづくりを支援するため、平成21年第2次補正予算「環境負荷軽減型地域ICTシステム基盤確立事業」及び「ネットワーク統合制御システム標準化等推進事業」により、最先端のICTを利用し、地域特性に合わせたICTシステム基盤を構築するための地域実証を計6か所(青森県六ヶ所村、愛媛県松山市、福岡県北九州市、熊本県熊本市、宮城県栗原市、長崎県五島市)で実施した。今後は、この成果について国際標準化や他の地域への展開を行う予定である。
 また、平成23年度から「グリーンICT推進事業」を実施し、「Green of ICT」と「Green by ICT」の双方について、世界の最新の技術動向の調査や分析を行うとともに、データセンターの省エネ、HEMS、BEMS等、CO2削減効果が大きい領域の実証実験を行っている。これにより、ICTによるCO2削減のベストプラクティスモデルや環境影響評価手法を確立し、ICTと気候変動に関する国際標準化を推進している。


23 BEMS(Building Energy Management System):ビルエネルギー管理システム。業務用ビル等において、室内環境・エネルギー使用状況を把握し、室内環境に応じた機器または、設備等の運転管理によってエネルギー消費量の削減を図るシステム
HEMS(Home Energy Management System):家庭用エネルギー管理システム。住宅にICT技術を活用したネットワーク対応型の省エネマネジメント装置を設置し、自動制御による省エネルギー対策を推進するシステム
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