総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > 移動通信システムの進化が生み出した新たな価値
第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第1節 新たな価値を創出する移動通信システム

(3)移動通信システムの進化が生み出した新たな価値

ここまで移動通信システムの進化を振り返ってきたが、移動通信システム(主に携帯電話)の位置付けはどのように変遷してきたであろうか。

1Gでは機能は音声通話に限定されており、主にビジネスマンが外出時でも通話できることが大きな価値であった。2Gにおいて、デジタル通信方式の導入によって通話品質が向上したほか、電子メールやウェブブラウザ経由でのインターネット閲覧といったデータ通信も可能となった。1Gの時代には利用が限定的であった移動通信システムは、2Gの時代において急速に普及し、固定通信と並ぶインフラとして定着していったが、その位置付けは、あくまで通信基盤としてのインフラにとどまっていたと言える。

3Gの開始以降、携帯電話の急速な普及及び携帯電話を用いた様々なサービスの登場を通じて、携帯電話を中心としたエコシステムが形成されていき、「ワイヤレスの産業化」が進むことになった。自宅や職場にとどまらず、様々な場所で情報を送受信できることで人々の活動の効率化を促し、生産性向上に寄与することが期待された。なお、我が国においては、端末にSIMロックが設定されていることが一般的であったこともあり、携帯電話事業者との契約と携帯電話端末の購入は一体的に行われていたほか、携帯電話上におけるインターネット接続サービスの料金徴収代行を携帯電話事業者が担っていたこともあって、エコシステムの主導権は携帯電話事業者が握り、端末メーカーやコンテンツ提供事業者と結びつく形で形成されていた。

その後、2008年のiPhone3Gの登場によってこのエコシステムの構造は大きく変容する。翌年のGoogleによるAndroidのリリースとともに、第三者がスマートフォン向けサービスをアプリとして開発し、配信できる仕組みが構築されていくことにより、スマートフォン向けOSを提供するAppleやGoogleがプラットフォーマーとしての地位を確立することとなった。また、プラットフォームが存在することにより、アプリケーション提供者はプラットフォームとの接続性を確保するだけで良いため、モバイルビジネス参入へのハードルが下がり、多様なアプリケーションが開発・提供されていった(図表1-1-2-9)。

図表1-1-2-9 垂直統合と分離(PFあり)の比較
(出典)平成29年版情報通信白書

加えて、スマートフォン自体のインタフェースとしての革新性もあって急速に利用者の支持を集めていったこともあり、エコシステムの主導権は、携帯電話事業者からデジタル・プラットフォーマーへとシフトしていった。そして、3Gから4Gへと進化していく過程で、移動通信システムは、デジタル・プラットフォーマーを中心に、携帯電話事業者、端末メーカー及びプラットフォーム上でコンテンツ・アプリケーションを提供する事業者を巻き込んだ情報通信産業として更なる進化を遂げていった。音楽や動画、ゲームといった娯楽以外にも、ユーザの生活に根ざした様々なアプリ・サービスが開発・提供されるようになったことで、移動通信システムは、単なる通信基盤からユーザの生活を支える基盤へと変容していくこととなった。

また、1Gから3Gまで変化する過程において、携帯電話の主な用途は音声通話からデータ通信へと徐々にシフトしていったが、フィーチャーフォンを利用していた頃における移動通信システムの機能的価値は、主として「情報の伝達」であった。ところが、スマートフォンの登場によって端末の性能がPC並みへと向上すると、移動通信システムの機能的価値は、情報の伝達だけでなく、「情報をいかに加工・処理して新たな価値を付加するか」へと変容していった。同時に、情報通信産業以外の業種においても、自身の産業における生産性の向上に向けて、スマートフォンをはじめとするワイヤレスの活用や、クラウド、ビッグデータ、IoT、AI、VR/AR等と組み合わせた社会実装について本格的な検討が始まった。「ワイヤレスの産業化」の次のステップである「産業のワイヤレス化」に向けた萌芽が見えてきた時期でもある。(図表1-1-2-10

図表1-1-2-10 移動通信システムの進化
(出典)総務省作成資料
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