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第1部 5G が促すデジタル変革と新たな日常の構築
第2節 2020年に向けたデジタル化の動き

(1)ICT分野におけるレガシー創出に向けた取組

ア 総務省

総務省では2014年より「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」を立ち上げ、検討を行ってきた。本懇談会は、東京2020大会を成功させ、東京2020大会までに整備され利活用された様々なICTをその後のレガシーとして残すことで大会以降の我が国の持続的成長につなげ、2020年に向けた社会全体のICT化を実現するため、その推進方策について検討を行うことを目的としている。

懇談会で策定されたアクションプランでは世界最高水準のICTインフラ実現のため、①無料公衆無線LAN環境の整備、②第5世代移動通信システムの実現、③4K8Kの推進、④サイバーセキュリティの強化が挙げられている。また、高度なICT利活用分野としては、⑤多言語音声翻訳対応の拡充、⑥デジタルサイネージの機能拡大、⑦オープンデータの利活用推進、⑧放送コンテンツの海外展開の促進が挙げられている。

さらに、各分野横断的なアクションプランとして、⑨旅行者の個人情報や属性情報を連携する共通クラウド基盤「おもてなしクラウド」による都市サービスの高度化、I4K8K及び高臨場技術を用いた様々な高度な映像配信サービスの整備が計画され、それぞれの実現に向けたアクションプランが規定されている。

イ 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

組織委員会は、2015年に「大会開催基本計画」を策定し、IOCへ提出しており、「第6章アクション&レガシー」の項において、ICT施策に関して以下のとおり記載している(図表2-2-2-1)。

図表2-2-2-1 大会開催基本計画「第6章 アクション&レガシー」
(出典)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(2015)「大会開催基本計画」

また、その後2016年に「東京2020アクション&レガシープラン」を取りまとめ、毎年更新した上で公表している。その中でICTに関わる検討テーマとして、①スポーツ・プレゼンテーションを進化させるためのODF2活用、②スポーツ振興のレガシーを目指したCRM基盤、③競技会場で整備すべきICT環境とレガシーとしての利活用が主に掲げられており、特にレガシーの観点では、競技場のICT環境整備、オープン交通データの活用、サステナブルなバリアフリーマップの作成、大会後のレガシープログラムへの継承が項目として挙げられている。

さらに、組織委員会では大会ビジョンに掲げた「史上最もイノベーティブで世界にポジティブな改革をもたらす大会」を目指し、イノベーティブな取組の一つとして、「東京2020ロボットプロジェクト」を実施している。これは我が国の誇るロボット技術を活用し、世界中の人々が注目する東京2020大会を契機としてロボットの社会実装を推進することにより、ロボットが様々な場面で人々に寄り添い役に立つ姿を発信し、我が国と世界にポジティブな未来を提示することを狙いとするものである。実施に際してはスポーツにおけるイノベ―ション3、参画におけるイノベーション4、社会の未来を変えるイノベーション5の3点においてロボットを活用する検討が進められている。大会期間中に導入されるロボットも、今後の日本社会に定着していくことが予想される。

ウ 東京都

東京都は2018年に「2020年に向けた東京都の取組−大会後のレガシーを見据えて−」を公表した。またこれとは別に「都民ファーストでつくる『新しい東京』〜2020年に向けた実行プラン〜」を2016年12月に策定している。

これらのプランにおいて掲げられているテーマは多岐に渡るが、例えば選手村にエネルギーマネジメントの導入を行うことや、都内における無料Wi-Fiサービスの接続環境の向上、ICTを活用した自動翻訳技術など多言語対応の強化、自動運転システムなどのITS技術やロボットの利活用など、大会を通じて我が国のテクノロジーを世界に発信し、渋滞のない東京の実現、超高齢社会への対応などに生かすことが挙げられている。さらに、テレワークの普及促進に向けて東京テレワーク推進センターにおける情報発信や中小企業向けの体験セミナーの実施も示された。

東京都ではその他にも、2020年に向けた取組として「都庁2020アクションプラン」として都庁における変革も進めようとしている。その中には、職員によるテレワーク実施も盛り込まれ、約2800人の端末配備済みの本庁職員全員による週1回以上のテレワーク実施や、当該職員全員による一斉実施に関しても計画されており、伸べ14,000人以上によるテレワークの実施を目指している。

また、東京都版Society 5.0に向けた検討6においては、オリンピック・パラリンピックを東京の独自性を発揮する機会ととらえ、キャッシュレス決済の推進のほか、官民連携データプラットフォームを構築し、行政データ、民間データの中でも公共性が高いデータやその他の民間データを都民・民間企業が自由に活用することで、MaaS7、キャッシュレス化、オープン/デジタルガバメント等を通じた、Society 5.0の実現につなげていくことを目指している。



2 Olympic Data Feedの略。メディアや観客に提供する競技に関する情報を、統一的なデータ形式として規定するもの

3 スポーツの新しい観方、スポーツの新しい楽しみ方、デジタル技術を使った判定

4 大会への新しい参画の仕方、若者の新しい参画の枠組み

5 大会を契機としたバリアフリーな社会の構築、持続可能性への配慮、安心・安全な社会の整備

6 東京都(2020)「『Society 5.0』社会実装モデルのあり方検討会報告書」(https://www.senryaku.metro.tokyo.lg.jp/society5.0/pdf/200210_houkokusho.pdfPDF

7 MaaS(Mobility as a Service)とは、バス、電車、飛行機といった公共交通機関をスマートフォン等を用いてシームレスに結びつけ、検索〜予約〜支払いを一度に行えるようにすることで、ユーザの利便性を高め、また移動の効率化により都市部での交通渋滞や環境問題、地方での交通弱者対策などの問題の解決に役立てようとする考え方の上に立っているサービスをいう。

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