総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > テレワークの推進
第2部 基本データと政策動向
第6節 ICT利活用の推進

(3)テレワークの推進

テレワークは、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方である。子育て世代やシニア世代、障害のある方も含め、国民一人一人のライフステージや生活スタイルに合った多様な働き方を実現するとともに、災害時や感染症対策時に、業務継続性を確保する観点からも有効であり住む場所を自由に選ぶことが可能になることから、都市部から地方への人の流れを生み出し、地域活性化にも寄与するものである。一方で、企業におけるテレワーク導入率は令和元年時点で20.2%(300人以上の企業では32.1%、300人未満の企業では15.1%)2であることから、さらなる普及拡大に向け、総務省では、テレワーク導入の課題に対応する施策展開を行っている(図表6-6-1-5)。

図表6-6-1-5 テレワーク導入への主な課題

テレワークを導入しない理由として最も多く挙げられているのは「テレワークに適した仕事がない」という回答であり、導入に当たって大きな課題となっているのが、テレワークは特定の業種や一部の就業者のみに適用できる特別なものであるという意識の問題であると考えられる。そのため、総務省では、後述する「テレワーク・デイズ」や「テレワーク月間」といった取組を通じて意識の醸成・変革を促すことに加え、テレワーク導入のための知識の取得や、先進事例の参照等により各企業が課題を解決できるよう、企業等を対象としたセミナーの開催や先進事例の収集・紹介を行っている。

2019年度(令和元年度)には、全国13箇所において、企業等を対象としたセミナーを開催し、テレワークの最新動向、労務管理上の留意点、情報セキュリティ上の留意点のほか、テレワーク導入企業の事例等を紹介することで、企業等におけるテレワーク導入を後押しした。

総務省では、テレワークの導入・活用を進めている企業を「テレワーク先駆者」及び「テレワーク先駆者百選」として選定・公表するとともに、中でも特に優れた取組を「総務大臣賞」として表彰しており、2019年度(令和元年度)には、テレワーク先駆者11社、テレワーク先駆者百選32社を選定したほか、総務大臣賞として中小企業を含む4社を表彰した(図表6-6-1-6)。これら先進事例の収集や表彰は、企業等にとってテレワーク導入のインセンティブになるとともに、テレワーク導入を検討する企業が参照すべき取組の例として活用することが期待できるものである。

図表6-6-1-6 テレワーク先駆者百選及び総務大臣表彰の概要

また、テレワーク導入のICT面での課題として挙げられる、企業等がテレワークを実施する際の情報セキュリティ上の不安を払拭し、安心してテレワークを導入・活用する手引きとなる指針として、「テレワークセキュリティガイドライン」を策定・公表している。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大対応等のため中小企業等においてもテレワークの導入が拡大していることを踏まえ、当該ガイドラインをより具体化し実践的な内容としたチェックリスト等の策定検討を開始したほか、テレワーク導入時及び導入後においてセキュリティ対策の専門家が相談を受け付ける相談対応体制の整備を行った。

さらに、テレワークの導入を検討している企業等に対して、専門家を派遣し、テレワークシステム、情報セキュリティ等、主にICT面でテレワークの導入に関するアドバイスを行う「テレワークマネージャー派遣事業」により、個別の課題に応じた支援を実施している。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、テレワーク導入を検討する企業等に対する相談業務のさらなる充実を図るため、web・電話による相談を拡充するとともに、緊急経済対策に基づき、テレワークマネージャーの増員等を行っていくこととしている。

併せて、自社内及び他社にテレワークの導入支援ができる専門人材を育成し、テレワークの裾野拡大を図るため、2019年度(令和元年度)には、社会保険労務士、ITコーディネータ、中小企業診断士といった専門家を対象とした講習会を開催するとともに、専門的知見を集めたテキストブックの更新・公開を行った。

テレワークの普及の度合いは、上述のとおり、企業規模によって格差があり、テレワークの全国的な裾野拡大のためには、地方や中小企業におけるテレワークの普及促進に特に力を入れていく必要がある。そのため、今後は、中小企業を支援する団体とも連携したテレワークサポート体制の整備(テレワーク・サポートネットワーク)等を通じ、地域で身近な相談ができる窓口の整備、地域での相談会やセミナーの開催等を行い、中小企業の経営課題の解決手段としても、テレワークの導入・活用を推進していく(図表6-6-1-7)。

図表6-6-1-7 テレワーク・サポートネットワーク

また、テレワークは、多様で柔軟な働き方の実現という効果はもちろんのこと、通勤者数の減少を通じて都心部の交通混雑緩和にも寄与するものとして、積極的導入が求められている。そこで、総務省を始めとする関係府省は、東京都及び関係団体と連携し、2017年(平成29年)から、2020年東京オリンピック競技大会の開会式が予定されていた7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、大会期間中のテレワーク活用による交通混雑緩和と全国的なテレワークの定着を目的とし、企業等による全国一斉のテレワーク実施を呼びかけている(図表6-6-1-8)。

図表6-6-1-8 「テレワーク・デイズ」の概要

第2回目となる2018年(平成30年)には、7月23日から27日の約1週間の期間で、「テレワーク・デイズ」として規模を拡大して実施し、第3回目となった2019年(令和元年)には、東京2020大会の開催期間を想定した7月22日から9月6日の約1ヶ月半の期間に、大会前の本番テストとしてテレワークの集中的な実施を呼びかけたところ、「テレワーク・デイズ2019」には、2,887団体、約68万人が参加した。

テレワークの呼びかけによる交通混雑の削減効果については、テレワーク・デイズ2019の集中実施期間において、東京23区への通勤者が1日あたり約26.8万人減少(-9.2%)し、エリア別での通勤者減少量は、新宿西口方面、大崎、神田橋の順に多かった(図表6-6-1-9)。テレワーク・デイズ2018の実施期間と、テレワーク・デイズ2019の第1週目とを比較すると、23区内の通勤者数は、テレワーク・デイズ2018においては約41万人の減少であったのに対し、テレワーク・デイズ2019においては約124万人の減少となるなど、前年を上回る交通量の削減効果が見られた。そのほか、オフィスコストの削減の観点からは、テレワーク・デイズ参加企業へのアンケートの結果、事務用紙等の使用量が約38%減少、残業時間が約45%減少するなど、業務効率化にも大きな効果が見られた。

図表6-6-1-9 テレワーク・デイズ2019の主な効果(交通混雑の緩和)

2020年(令和2年)の新型コロナウイルスの感染拡大の状況等を踏まえ、東京2020大会は翌年に延期されることが決定したが、テレワークは、人と人との接触を減らし、感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立を可能とする働き方であることから、引き続き、テレワークの全国的な推進を行うため、2020年(令和2年)に開催予定であった「テレワーク・デイズ」の取組については、期間を限定せず、継続したテレワーク推進の呼びかけ、情報提供等の強化を行うこととしている。具体的には、「テレワーク・デイズ」のWEBサイトにおけるテレワーク関連情報の発信や、テレワーク実施企業の新型コロナウイルスにかかる取組事例の紹介等に取り組んでいく。

テレワークの普及促進に向けて、政府のみならず産学官一体となった取組も進めている。テレワーク推進フォーラム2005年(平成17年)11月に設立された産学官のテレワーク推進団体では、2015年(平成27年)から11月を「テレワーク月間」として、テレワークの普及促進に向けた広報等を集中的に実施している。

2019年度(令和元年度)のテレワーク月間においては、周知ポスター(図表6-6-1-10)やチラシを作成し、公共交通機関やイベント会場等でのPRを実施するとともに、月間中には、総務大臣賞の表彰式や各種のセミナーを開催するなど、月間を契機としたテレワークの機運の醸成に向け、普及啓発活動を行った。

図表6-6-1-10 テレワーク月間の周知ポスター

「ふるさとテレワーク」とは、地方のサテライトオフィス等においてテレワークにより都市部の仕事を行う働き方のことである。ふるさとテレワークの推進により、都市部から地方への人や仕事の流れを創出し、地方創生の実現に貢献するとともに、地方における時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を促進し、働き方改革の実現にも貢献するものである(図表6-6-1-11)。

図表6-6-1-11 「ふるさとテレワーク」の概要

総務省では、2015年度(平成27年度)に地域の実情や企業ニーズに応じたふるさとテレワークのモデルを実証し、2016年度(平成28年度)から2018年度(平成30年度)まで、地方自治体や民間企業等に対し、テレワーク環境を整備するための費用の一部(例:ICT機器購入費用)を補助する「ふるさとテレワーク推進事業」を行い、2019年度(令和元年度)は、地域課題解決に資するテレワーク環境のためのサテライトオフィス整備等への補助を、「地域IoT実装推進事業」の中で実施してきた3図表6-6-1-12)。

図表6-6-1-12 「ふるさとテレワーク」実証事業及び補助事業の実施地域

2020年度(令和2年度)は、「地域IoT実装・共同利用推進事業」の中で、地域課題解決に資するテレワーク環境のためのサテライトオフィス整備等への補助を実施する(図表6-6-1-13)。

図表6-6-1-13 令和2年度 地域IoT実装・共同利用推進事業(「働き方」:テレワーク)


2 総務省「令和元年通信利用動向調査(令和2年5月29日公表、調査時点は令和元年9月末)」より

3 ふるさとテレワークポータルサイト https://telework.soumu.go.jp/別ウィンドウで開きます

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る