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第2部 基本データと政策動向
第1節 総合戦略の推進

(3)IoT/データ利活用の推進

ア IoT利活用の推進
(ア)IoTネットワーク運用人材育成事業

IoT/ビッグデータ時代のネットワークは、センサー等のネットワークに接続される機器の爆発的な増加や流通するデータの多様化により、トラフィックの急激な変動等が生じることが予想される。このため、SDN/NFV等のソフトウェア技術を用いて、迅速かつ柔軟に通信経路の迂回や容量拡大等の制御を行う必要があり、この技術を活用してネットワークを運用・管理する人材が必要とされている。総務省は、2017年度(平成29年度)から一般社団法人「高度ITアーキテクト育成協議会(AITAC)」(同年7月設立)と連携し、人材を育成する環境基盤の整備を行い、基盤の構築・運用を通して人材育成を図ることで、求められるスキルの明確化やその認定の在り方を確立したところである。今後は、AITACにおいて、これまでの成果の発展、普及展開を推進する予定である。(図表6-1-2-3)。

図表6-1-2-3 IoTネットワーク運用人材育成事業
(イ)IoT機器等の電波利用システムの適正な利用のためのICT人材育成事業

今後、多様な分野・業種において膨大な数のIoT機器の利活用が見込まれる中で、多様なユーザーや若者・スタートアップの電波利用に係るリテラシー向上を図ることが不可欠である。このため、IoTユーザーを対象とした地域ごとの講習会や体験型セミナー・実地体験、開発者を目指す若者等を対象としたハッカソン体験・ワイヤレスIoT技術実証等の取組を推進し、IoT時代に必要な人材を育成している(図表6-1-2-4)。

図表6-1-2-4 IoT機器等の電波利用システムの適正な利用のためのICT人材育成事業
イ オープンデータ流通環境の整備

官民データ活用の推進を目的とする「官民データ活用推進基本法」(2016年(平成28年)12月14日公布・施行)においては、政府、地方公共団体等が保有するデータについて、国民が容易に利用できるよう必要な措置を講ずるものとされている。政府、地方公共団体等が保有するデータのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう、①営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの、 ②機械判読に適したもの、③無償で利用できるものの3点に該当するデータがオープンデータと定義5されている。

特に、地方公共団体のオープンデータについては、地域における新事業・新サービスの創出、行政サービスの高度化等を実現し、地域の経済活性化、課題解決等に寄与するものとして期待されている。このような観点から、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2019年(令和元年)6月14日閣議決定)では、2020年度(令和2年度)までに地方公共団体のオープンデータ取組率100%とすることが目標として定められている。総務省では、2012年度(平成24年度)より、公共交通、地盤、公共施設等の様々な分野におけるオープンデータ利活用の実証実験や一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構(VLED)6等の関係団体や関係府省等との連携を通じて、オープンデータの公開側・利活用側のためのガイド等の策定・改定(オープンデータのための標準化の推進)、オープンデータの有効活用につながるユースケースの構築、オープンデータ伝道師や地域情報化アドバイザーと連携して自治体のオープンデータ化の促進等の取組を進めてきた。

他方、2019年(令和元年)12月時点でオープンデータに取り組んでいる地方公共団体は1,788団体中668団体(全体37%)にとどまっている。内閣官房が実施したアンケート7によれば、「オープンデータの効果・メリット・ニーズが不明確」、「オープンデータを担当する人的リソースがない」といった課題が挙げられている。これらの課題を踏まえ、総務省では2018年度(平成30年度)から、地方公共団体におけるオープンデータの取組を支援するため、地方公共団体等の職員がデータ利活用の意義やデータ公開に関する知識・技術を体系的に習得できる研修等を行っている(図表6-1-2-5)。

図表6-1-2-5 地方公共団体職員向けオープンデータ研修について
ウ AIの普及促進

人工知能(AI)は、インターネット等を介して他のAI、情報システム等と連携し、ネットワーク化されること(AIネットワーク化)により、その便益及びリスクの双方が飛躍的に増大するとともに、空間を越えて広く波及することが見込まれている。

総務省は、2016年(平成28年)10月に「AIネットワーク社会推進会議8」(以下「推進会議」)を立ち上げ、2017年(平成29年)7月に、AIの開発において留意することが期待される事項を整理した「国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案」やAIシステムの具体的な利活用の場面(ユースケース)を想定したインパクト及びリスクに関する評価(シナリオ分析)をその内容とする「報告書2017」を取りまとめ、公表した9

また、AIの普及促進に伴い形成されるエコシステムの展望に関する検討やAIの利活用において留意することが期待される事項を整理した「AI利活用原則案」を含む「報告書2018」を2018年(平成30年)7月に取りまとめ、公表した10

総務省では、その成果を踏まえ、OECD11、G7等においてAIに関する国際的な議論を進めている。同年秋以降に行われた主な国際的な議論は次のものがある。今後も、各国政府や国内外の関係機関と連携して、AIに関する国際的な議論に積極的に貢献したいと考えている。

  • 2018年(平成30年)9月、OECDは、AIに関する理事会勧告策定を視野に入れ、AIの信頼構築と社会実装を促すための原則の内容について検討を実施するため、AI専門家会合(AIGO)を設置した。同会合は、2019年(平成31年)2月まで、計4回にわたって開催され、その結果、日本の検討成果等と調和の取れたAIGOの最終文書が取りまとめられた。同年3月にパリで開催されたOECDのデジタル経済政策委員会アドホック会合において、このAIGO最終文書に基づいてOECD事務局が作成した理事会勧告案に関する議論が行われ、加盟国の意見等を踏まえて修正が加えられた理事会勧告案が取りまとめられた。その後、同年5月の閣僚理事会にて同案が承認され、理事会勧告として公開された。
  • 2018年(平成30年)12月に、モントリオール(カナダ)でAIに関するG7マルチステークホルダ会合が開催され、G7各国の産学官・市民社会におけるAI専門家等が参加し、「社会のためのAI」、「イノベーションの解放」、「AIにおけるアカウンタビリティ」、「仕事の未来」といったテーマ毎に議論が行われた。我が国は、カナダとともに「AIにおけるアカウンタビリティ」の共同議長を担当した。

また、推進会議においては、「AI利活用原則案」について整理された論点等のさらなる検討を進めるため、同会議の下に「AIガバナンス検討会」を開催し、「AI利活用ガイドライン」を含む「報告書2019」を2019年(令和元年)8月に取りまとめた。

加えて、AIの社会実装の推進について、主に経済的な見地から議論を行うため、「AI経済検討会」を開催し、AI経済に関する基本的政策及び中長期的な戦略のあり方について検討を進め、同年5月に報告書を取りまとめた。同報告書に基づき、同年12月より、AI時代における新たな社会システムやデータ経済政策について更なる検討を行っている。特に、データ経済政策のあり方については、データが「AI時代における新たな資産」として経済活動において重要な役割を果たしていることを踏まえ、データの機能・役割、及び効果・価値の測定方法や、当該データの効果・価値に応じた正当な報酬のあり方等について検討している。

総務省では、「報告書201912」やAI経済検討会報告書を踏まえ、「AI利活用ガイドライン」をはじめとした、推進会議及び両検討会における成果や議論の内容を、国内及び国際的に共有するとともに、安心・安全で信頼性のあるAIの社会実装促進に向けた諸課題の検討に役立ており、引き続き、当該検討を進めていく。



5 オープンデータ基本指針(2017年(平成29年)5月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定):
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/data_shishin.pdfPDF

6 一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地方創生推進機構:
http://www.vled.or.jp/別ウィンドウで開きます

7 地方公共団体へのオープンデータの取組に関するアンケート結果・回答一覧(2018年(平成30年)12月実施):
https://cio.go.jp/policy-opendata#survey別ウィンドウで開きます

8 AIネットワーク社会推進会議:
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/index.html別ウィンドウで開きます

9 「報告書2017」:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000067.html別ウィンドウで開きます

10 「報告書2018」:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000072.html別ウィンドウで開きます

11 経済協力開発機構(OECD)における人工知能(AI)に関する取組:
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/oecd_ai/index.html別ウィンドウで開きます

12 「報告書2019」:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000081.html別ウィンドウで開きます

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