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第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第2節 デジタルデータ活用の現状と課題

(1)日本企業におけるデータ活用の現状

現在の日本企業におけるデジタルデータの活用に関する実態を把握するため、企業の従業員を対象に2020年3月にアンケートを実施した。

ア データ活用の現状

まず、企業活動において活用しているデータの種類について分析を行った(図表3-2-1-1)。5年前に実施した調査1と比較すると、POSやeコマースによる販売記録、MtoMデータを含む自動取得データの活用が大きく進展しており、各企業におけるIoTの導入が進んでいることがうかがえる。また、電話などの音声データの活用も進んでおり、この5年でデータ分析による企業経営の高度化が進められていることがうかがえる。

図表3-2-1-1 分析に活用しているデータ
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」

企業規模別に見ると、いずれのデータも大企業の活用割合が高く、特にGPSデータやセンサーデータなどのIoT関連データについては中小企業での活用がまだ進んでいないことが分かる(図表3-2-1-2)。

図表3-2-1-2 分析に活用しているデータ(企業規模別)2
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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また、業務領域別にデータの活用状況を見ると、「経営企画・組織改革」、「製品・サービスの企画、開発」、「マーケティング」といった領域で多く活用されている(図表3-2-1-3)。いずれかの領域でデータを活用している企業は、大企業では約9割、中小企業でも半数を超えている。産業別では製造業が進んでおり、エネルギー・インフラ、サービス業では6割程度に留まっている。

図表3-2-1-3 データを活用している業務領域
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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データの分析手法については、「データの閲覧」と「集計」が企業規模や産業を問わず約7割と多くなっている(図表3-2-1-4)。一方で、「統計的な分析」、「機械学習・ディープラーニングなど人工知能(AI)を活用した予測」は大企業と中小企業で大きな差が見られ、資金的な要因に加えて人材面の差が現れていると考えられる。

図表3-2-1-4 データの分析手法
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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データ分析体制については、「データ分析を行う専門部署の担当者」、「各事業部門のデータ分析専門の担当者」、「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」はほぼ同じ程度になっている(図表3-2-1-5)。しかし、中小企業については「各事業部門のデータ分析が専門ではない人」により分析が行われていることが多く、データ分析を専門とする人材が中小企業では不足している状況が推測される。

図表3-2-1-5 データの分析体制
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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また、分析に用いるデータの入手元は、「社内データ」が多いものの、「外部データを購入」している企業も3割近く存在する(図表3-2-1-6)。領域別に見ると、データの入手元には大きな差異は見られないものの、「製品・サービスの企画、開発」、「マーケティング」といった領域で「外部データを購入」している割合がやや高い。

図表3-2-1-6 データの入手元
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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イ デジタル・トランスフォーメーションの取組

続いて、デジタル・トランスフォーメーションの取組についても調査を行った。ICT化に関連する業務慣行の改善について尋ねたところ、「社内業務のペーパーレス化」が最も選択された(図表3-2-1-7)。一方で直近3年以内に実施した取組を尋ねると「テレワーク、Web会議などを活用した柔軟な働き方の促進」が最も多かった。

図表3-2-1-7 ICT化に関連する業務慣行の改善
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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また、ICT化に関連する職場組織に関する取組については、「従業員の研修の充実」が最も多くなっている(図表3-2-1-8)。一方で、直近3年以内に実施した取組としては、「従業員の社内における流動性の促進」が最も多く、社内における人材の交流などが促進されていることがうかがえる。

図表3-2-1-8 ICT化に関連する職場組織に関する取組
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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また、データに基づく経営に関する設問では、データ活用に関連した取組として、「データ分析人材の採用」、「データ活用戦略の策定」、「データ分析に基づいた経営判断の実施」を挙げた企業が4割程度となっており、徐々にデータに基づく経営が重要視されてきていることがうかがえる(図表3-2-1-9)。

図表3-2-1-9 データに基づく経営
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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このように、デジタル・トランスフォーメーションの取組に係るアンケート結果からは、各企業においてここ数年で様々な取組が行われていることが分かる。

ウ 今後のデータ活用の見通し

各企業は今後のデータの活用についてどのように考えているのだろうか。

各企業におおむね3年から5年先のそれぞれの領域におけるデータの活用予定を尋ねたところ、どの領域でも3割程度の企業が、現在活用していないが「今後はデータを活用していきたい」と回答している(図表3-2-1-10)。特に「保守・メンテナンス・サポート」の領域において割合がやや高くなっている。一方で、企業内に当該事業領域が存在しない場合が含まれるものの、「今後もデータを活用する予定はない」という割合も4割から5割前後と最も高い割合となっている。

図表3-2-1-10 今後のデータ活用予定
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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また、今後のデータ活用に関連した取組については、企業規模や産業によって大きな差異はなく、「データの質(多様性、粒度、頻度等)を向上させたい」、「分析技術を向上させたい」といった回答が多くなっている(図表3-2-1-11)。このことから、新たな種類のデータを入手したり、よりきめ細やかなデータを整備したりするとともに、それらをAIなど新たな分析技術を活用して分析することで企業経営を向上させたい企業が多いことが分かる。

図表3-2-1-11 今後のデータ活用に関する取組としてどのようなことを考えているか
(出典)総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究」
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1 総務省(2015)「ビッグデータの流通量の推計及びビッグデータの活用実態に関する調査研究」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/h27_03_houkoku.pdfPDF

2 中小企業庁「中小企業者の定義」(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html別ウィンドウで開きます)を元に、「製造業」、「建設業」、「電力・ガス・水道業」、「金融・保険業」、「不動産業」、「運輸業」、「情報通信業」は従業員数が300人以上の企業を「大企業」、同300人未満の企業を「中小企業」として分類し、「商業」、「サービス業」は、従業員数が100人以上の企業を「大企業」、同100人未満の企業を「中小企業」として分類。

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