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第1部 特集 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第4節 5Gが促す産業のワイヤレス化

(7)エンターテインメント・観光分野

ア エンターテインメント・観光分野が抱える課題
(ア)施設を核とした街づくり

スタジアム・アリーナ等のスポーツ施設の整備・運営は、主に施設所有者であり街づくりの一環等で取り組んでいる地方公共団体の他、土地開発や興行を担う民間事業者など、多種多様なステークホルダによって行われている。しかしながら、都市部等の一部を除き、多くの施設において、老朽化、郊外立地による低い利用率、コスト負担や採算性低下といった運営上の課題が顕在化している。動員増につながる新たな観戦スタイルの創出や施設利用の多目的化、また、スポーツビジネスのためだけに留まらない街づくりへの貢献も求められている。公共セクタにおいても、観光・文化施設も同様に、施設管理に係る負担が増していることに伴い、施設の多面的な活用が課題となっている。こうした様々な施設を核とした中心市街地の再生や賑わいの創出、観光客の回遊性向上などにつなげるための施策も課題となっている。

(イ)地域の魅力発信の強化

各地域の「まち」の魅力を伝え、人々の定住、来訪促進につなげるため、全国の地方公共団体や観光業界等が、国内や海外からのインバウンドを対象とした観光・文化等の情報発信や、地域間の広域連携による観光コンテンツの拡充を進めている。地域にとっても観光振興のために地域固有の文化や伝統の保持・発展を図り、魅力ある地域づくりを行うことは、地域の連帯を強め、地域住民が誇りと生きがいをもって生活していくための基盤ともなっている。こうした目的により、より一層魅力ある文化や観光スポットの創造による情報発信の強化が課題となっている。

イ 現状のICT活用に係る取組

スポーツ施設等においては、官民連携によるスタジアム・アリーナ改革の一環でコストセンターからプロフィットセンターへの転換や官民による新しい公共施設の運営の在り方等がうたわれている。ICTは、コスト削減と付加価値創出の両面から、スタジアムの通信環境を拡充し、スマートフォンアプリによるスタジアム内外での情報配信や観覧中の接客等によって観覧中の体験を高め、スタジアム来場者を増やすなどの取組が行われている。

地域の魅力発信の強化においては、インバウンド顧客の回遊性向上に資する位置情報を利用したスマートフォンに向けたコンテンツ配信、VR/ARを活用した新たなコンテンツの魅せ方などを模索している。

ウ エンターテインメント・観光分野における5Gのユースケース
(ア)施設におけるオンデマンドのコンテンツ配信

スポーツ施設や博物館・美術館などの文化施設等において、5Gの特長を活かした高精細映像(試合映像や街の魅力情報等)の伝送や施設利用者等の顧客ニーズに応じたオンデマンドのコンテンツ配信やサービス提供が想定される。また、その際に施設や地域において、高精細カメラ等によるリアルタイムな集客状況の把握やAI解析等を組み合わせ、施設利用者や観光客等の属性や動線分析を通じて、よりきめ細かなマーケティング施策に役立てることができる。これにより、施設の魅力度や価値の向上による集客力向上や、施設周辺における回遊性向上施策とも連携することが可能になる。

◎施設におけるオンデマンドのコンテンツ配信の取組事例

2019年度の総務省5G総合実証試験では、ゴルフ場において、4K360度カメラからの映像を5Gを介して次世代ゴルフカートのディスプレイにライブ配信するとともに、スイング映像を解析し、ボールの落下地点予測情報を配信する検証を実施した。この実証は、体験者から好評を得たほか、落下位置推定により、目視と比べて1打球当たり7秒のゴルフボール探索時間の短縮を実現した。

図表2-4-3-13 ゴルフ場でのラウンド補助(総務省5G総合実証試験)
(出典)総務省作成資料
(イ)地域の情報発信

5Gによる高精細映像やVR/AR等リッチコンテンツを活用した、サイネージ・端末等への地域の魅力発信による誘客や地域における回遊性向上施策との連携など、より一体的な街づくりに資する取組につながる。

エ 期待される効果等

エンターテインメント・観光分野では、集客施設や集客拠点で5Gによるリアルかつリッチな映像コンテンツを提供、演出を高めることにより、顧客の満足度を高め、誘客数やリピート率の向上に寄与することが期待される。また、5Gから得られる情報とAIを活用した分析を組み合わせることで、エリアマーケティングの高度化が実現し、スマートシティの実現や地域の交流人口の拡大に貢献することが期待される。

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