総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > Beyond 5G推進戦略
第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第2節 Beyond 5Gの実現に向けて

(2)Beyond 5G推進戦略

上記の問題意識を踏まえて策定されたBeyond 5G推進戦略の概要は以下のとおりである(図表4-2-3-1)。

図表4-2-3-1 Beyond 5G推進戦略〜基本方針〜
(出典)総務省「Beyond 5G推進戦略」(2020)
ア 基本方針

非連続的な飛躍的進化であるBeyond 5Gの早期かつ円滑な実現と国際競争力の強化(我が国の企業及びそのパートナー企業がBeyond 5Gインフラ(ハードウェア+ソフトウェア)市場シェア3割程度の獲得を目指すとともに、デバイス分野や利活用分野でも一定のプレゼンスを持続的に確保することを目指すこと)を図るためには、我が国がグローバルなオープンイノベーションのエコシステムの一角となることが重要。この観点から、次の基本方針の下、研究開発、知財・標準化、展開のそれぞれについて、ロードマップを策定し、戦略的に取り組む。

① グローバル・ファースト: 供給面・需要面ともに国内市場をグローバル市場の一部と捉えるとともに、我が国に世界から人材等が集まるようにするといった双方向性も目指す。

② イノベーションを生むエコシステムの構築: 可能な限り制約を最小化するなど、多様なプレイヤーによる自由でアジャイルな取組を積極的に促す制度設計を基本とし、イノベーションを生むエコシステムを構築する。

③ リソースの集中投入: グローバルな協働は、各プレイヤーが互いに「強み」を持ち寄って行われるという前提の下、我が国のプレイヤーがその協働に効果的に参画できるようにするという観点から国が取り組む必要性の高い施策に絞り、一定期間集中的にリソースを投入する。

イ 研究開発戦略

Beyond 5Gに求められる機能を実現するには、テラヘルツ波や光・量子技術、AI等の先端的な要素技術を含む無線技術、ネットワーク技術、省エネ技術、セキュリティ技術、これらの基盤となるソフトウェア関連技術等の開発・高度化、標準化が不可欠となる。また、これらの技術の開発等に際しては、価格競争力の取得にも留意する必要がある。

Beyond 5Gにおける将来の国際競争力を確保するためには、我が国に「強みがある技術」と我が国として「持つことが不可欠な技術」の研究開発力を重点的に強化する必要があり、戦略的に重要な当該技術に限定して、各国における開発競争が起こる前の「つぼみ」の段階から、国費による集中的な支援を実施する。また、欧米等戦略的パートナーとの連携による先端的な要素技術の国際共同研究開発プロジェクトを推進する。

こうした「つぼみ」の技術を育成し、世界に先駆け実用化するためには、ベンチャーや他分野も含め多種多様な人材を呼び込み、自由に研究開発できる環境の整備や担い手の育成が極めて重要である。

その際、「技術で勝てても市場では必ずしも勝てなかった」過去の事例に学ぶことも必要である。「グローバル・ファースト」の方針の下、開発した要素技術が民間企業によって製品化され、競争力のある形で実装されることを見据えた取組を行う必要がある。このため、特に国による研究開発については、知財や国内外の市場の獲得に向けた体制や計画・戦略を定め、それを踏まえて推進する。

国による研究開発プロジェクトの推進に当たっては、より戦略的かつ柔軟に実施できるようその運用を改善する。

以上の考え方に基づき、国内外の市場がBeyond 5Gに求める通信技術について、国は研究開発を積極的に支援・実施し、2025年頃から順次要素技術を確立、3GPP等で標準化することで、2030年頃のBeyond 5Gのサービスインにつなげることを目標とする。

この目標に向け、国内外の多様なプレイヤーが協働して研究開発を行える拠点として「Beyond 5G研究開発プラットフォーム(仮称)」を構築する。その際、SINET7等の研究基盤や若手研究者に対するファンディングプログラム等との連携も図りつつ、戦略的に重要な要素技術の研究開発を関係省庁と連携して集中的に推進するとともに、我が国における開発・製造基盤も強化する。また、研究開発用途での電波利用に係る規制の緩和等により民間の研究開発投資の支援を実施する。あわせて、イノベーションを起こし得るアイデアや人材の発掘・育成も実施する。

ウ 知財・標準化戦略

知財・標準化や、その後の国内外の市場シェアの獲得を目指す取組は、直接の裨益者である各企業の自助努力が基本である。しかし、Beyond 5Gは国民生活や経済活動を支える基幹的な基盤であることや、知財・標準化が自企業を超えた波及効果を生むことを踏まえ、我が国が目指すBeyond 5Gの実現に必要な技術要件が国際標準となり、かつ、我が国の安全保障や産業の発展にとって好ましいものとなるようにするという観点から政府としても民間部門と連携しつつ積極的にその役割を果たす。

国際標準化については、①オール光ネットワークの実現、②オープン・アーキテクチャの採用、③ソフトウェアによる最大限の仮想化、④上空・海洋など地上以外への拡張、⑤セキュリティの抜本的強化を重視する。

標準化や実装に向けた取組は、戦略的パートナーとの緊密な連携の下で実施する。その際、我が国の影響力を確保するためには、優れた技術を開発するだけでは足りず、標準化作業への我が国関係者の関与の拡大や関連する知財の確保等が必須であることから、これまでの知財・標準化戦略を抜本的に見直すことが必要である。

以上の考え方に基づき、Beyond 5G市場におけるサプライチェーンリスクの軽減と市場参入機会の創出に向け、研究開発成果等を踏まえた技術要件を2025年頃から順次3GPPやITU等での国際標準に反映させる。このため、早期に戦略的なパートナーとの連携体制を構築するとともに、2030年時点におけるBeyond 5Gの必須特許数シェアについて、国際的な競争力・交渉力の確保に活用できる形で5G必須特許の世界トップシェア8と同水準の10%以上を目指し、併せて、関連する周辺特許の取得も促進する。

この目標に向け、標準化や知財獲得の必要性を戦略的に見極めつつ、戦略的パートナーとの国際連携を強化するとともに、産学官の主要プレイヤーが参加して戦略的に標準化等に取り組める場として「Beyond 5G知財・標準化戦略センター(仮称)」を設置すること等により、戦略的なオープン化・デファクト化を推進する。

エ 展開戦略

Beyond 5Gの早期かつ円滑な導入を図るためには、その前提として、5Gがあらゆる分野や地域において浸透し、徹底的に使いこなされている必要がある。これにより生まれる「Beyond 5G ready」な環境(あらゆる者が必要なリテラシーを備え、Society 5.0の恩恵を十分に享受できる環境)を早期に実現する。そのために5Gの早期の面的展開(供給側の取組)と産業利用・公的利用に係るユースケースの構築・拡大(需要側の取組)を一体的に推進する。

その際、グローバルな利活用を当初から念頭に置くこと、セキュリティ・バイ・デザインやプライバシー・バイ・デザイン、ユニバーサルデザインに基づいたものとすること等に留意しつつ、大学・企業等の能力を最大限活用する。

以上の考え方に基づき、2030年までに「Beyond 5G ready」な環境を実現することを目標とする。具体的には、5Gの面的展開を早急に実現させるとともに、インパクトのあるユーザオリエンテッドな利用者視点に基づく国内外のユースケースを確立・浸透させることにより、2030年度に44兆円の付加価値を創出する9

この目標に向け、5G投資促進税制や5Gエリア整備支援制度といった税・財政支援、周波数確保等の制度整備、インフラシェアリングの促進等により、5Gネットワークの面的拡大を図る。また、サイバーセキュリティを確保しつつ、国内外で課題解決型の実証プロジェクトを実施して多様なユースケースを構築するとともに、それを機能ごとにモジュール化してクラウド型の共通プラットフォームにより必要なものだけを低廉かつ容易に利用できるよう、イノベーションハブとしての機能を持つ仕組み(「5Gソリューション提供センター(仮称)」)を構築する。その際、緊急事態においても国民生活や経済活動が維持される社会の構築に向け、社会全体のデジタル化を推進しつつ、街全体をリビング・テストベッドとするための地域の大学、地元経済界や行政と連携した体制整備や、地方・中小の企業におけるクラウドの利活用促進に向けた分散型クラウド基盤の構築等を推進する。また、5Gインフラ・ソリューションのグローバル展開にも併せて取り組む。

オ 戦略の推進方針

Beyond 5G推進戦略を産学官の連携により強力かつ積極的に推進するための母体として「Beyond 5G推進コンソーシアム(仮称)」を設置し、①各戦略に基づき実施される具体的な取組を産学官で共有するとともに、②国内外の企業や大学等による新規の実証プロジェクトの立ち上げ支援等を実施する。また、同コンソーシアムが主体となって③毎年「Beyond 5G国際カンファレンス(仮称)」を開催し、研究開発等に関する最新の国際動向の情報を共有するとともに、我が国におけるBeyond 5Gに関する取組状況について国際的に発信する。

同コンソーシアムの活動を支えるため、総務省内に部局横断的な「Beyond 5G戦略推進タスクフォース(仮称)」を設置し、総合科学技術・イノベーション会議、IT総合戦略本部、サイバーセキュリティ戦略本部と連携しつつ、本戦略の推進ロードマップの進捗を管理する。その状況について、毎年プログレスレポートを取りまとめて公表するとともに、必要に応じて戦略の改定等を実施する。



7 国立情報学研究所(NII)が運営する、全国900以上の大学・研究機関等が接続する学術情報ネットワーク

8 5G必須特許の世界トップシェアは、クアルコム(米):11.4%、ファーウェイ(中):11.1%、サムスン(韓):9.2%とつづく。(サイバー総研調査に基づく)

9 ワイヤレスを活用した生産性向上に係る取組の活性化による実質GDPの押し上げ効果。(出典:電波有効利用成長戦略懇談会報告書)

テキスト形式のファイルはこちら

ページトップへ戻る