世界的規模で深刻化するサイバーセキュリティ上の脅威の増大を背景として、我が国におけるサイバーセキュリティ政策の基本理念等を定めた「サイバーセキュリティ基本法」が2014年(平成26年)11月に成立した。2015年(平成27年)1月、同法に基づき、サイバーセキュリティ政策に係る政府の司令塔として、内閣の下にサイバーセキュリティ戦略本部が新たに設置された。
同本部における検討を経て、同年9月に「サイバーセキュリティ戦略1」が閣議決定されており、同戦略では、監視対象の拡大等、「政府機関全体としてのサイバーセキュリティを強化するため、独立行政法人や、府省庁と一体となり公的業務を行う特殊法人等における対策の総合的な強化」や、「実践的な訓練・演習の実施等の取組」等を推進することが掲げられている。
その後政府は、サイバー空間とフィジカル(実)空間を高度に融合させることにより、経済的発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を目指す方針を決定し、経済社会が、人々に豊かさをもたらし、持続的に発展するためには、その基盤であるサイバー空間のサイバーセキュリティが確保されつつ、自律的・持続的に進化・発展していく必要があるとされた。こうした認識の下、東京2020大会等の国際的なイベントを控えていることを見据え、2020年(令和2年)以降の目指す姿を念頭に置きつつ、サイバーセキュリティに係る我が国としての基本的な立場や在り方を明らかにするとともに、今後3年間の諸施策の目標及び実施方針を国内外に明確にするため、新たな「サイバーセキュリティ戦略2」が2018年(平成30年)7月に閣議決定された。同戦略では、目指すサイバーセキュリティの在り方を「サイバーセキュリティエコシステム」と名づけ、3つの観点(①サービス提供者の任務保証、②リスクマネジメント、③参加・連携・協働)からの取組を推進することとしている。また、同戦略の下、実施した具体的な施策の実施状況等の年次報告と、次年度に実施する具体的な施策等の年次計画をそれぞれ毎年取りまとめており、2020年度については「サイバーセキュリティ2020」が2020年(令和2年)5月に本部決定された。
また、サイバーセキュリティに対する脅威が一層深刻化する中、我が国におけるサイバーセキュリティの確保を促進し、東京2020大会の開催に万全を期すため、官民の多様な主体が相互に連携し、サイバーセキュリティに関する施策を推進する必要があることから、「サイバーセキュリティ基本法の一部を改正する法律」が2018年(平成30年)12月に成立し、同法に基づいて、官民の多様な主体が相互に連携して情報共有を図り、必要な対策等について協議を行うための協議会として、新たに「サイバーセキュリティ協議会」が2019年(平成31年)4月に創設された。同協議会は、国の行政機関、地方公共団体、重要インフラ事業者、サイバー関連事業者、教育研究機関、有識者等で構成され、構成員には秘密保持義務及び協議会への情報提供の協力義務が課されることとされており、専門機関等から得られた脅威情報を戦略的かつ迅速に共有し、サイバーセキュリティの確保に取り組んでいく。
1 サイバーセキュリティ戦略:https://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/cs-senryaku.pdf
2 新たな「サイバーセキュリティ戦略」:
https://www.nisc.go.jp/active/kihon/pdf/cs-senryaku2018-kakugikettei.pdf