総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > デジタルデータの事業者間の共有に向けた各国の取組
第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第2節 デジタルデータ活用の現状と課題

3 デジタルデータのさらなる活用に向けて

(1)デジタルデータの事業者間の共有に向けた各国の取組

これらのアンケート結果からは、日本におけるデータの活用は、米国やドイツに比べると進んでいないと言える。では活用を進めるためにはどのような方策が考えられるだろうか。

ひとつには、データ共有を円滑に行うための枠組みの構築が考えられる。各企業がより容易に幅広いデータを入手することが可能となれば、これまで利用可能なデータが入手できなかった企業においてもその経営に生かすことができるようになる。また、日本を含む調査対象国においては、デジタルデータの活用における課題等としてデータのフォーマットのばらつきや品質の確保が挙げられており、データ共有の枠組みが構築される過程において、このような課題の解決に向けた議論も促されていくことだろう。

こうした取組については、既に日本や欧州において議論が始まりつつある。

ア 世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画

我が国においては、政府が2019年6月に世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画8を閣議決定したところであり、その中でデジタルデータの事業者間での共有に向けた取組についても盛り込まれている。

同計画では、デジタル化自体をあくまで手段としてとらえ、国民の利便性の飛躍的な向上と行政・民間の効率化につなげるとともに、データを新たな資源として活用することにより、全ての国民が安全・安心に、デジタル化の恩恵を享受することを目指している。そしてSociety 5.0時代にふさわしいデジタル化の条件の1つとして、「データの資源化と最大活用につながる、デジタル化」を掲げており、機械判読性(machine-readable)や発見可能性(findable)を確保することや、企業間のデータ共有を通じて生産性向上を目指すことを挙げている。加えて、民間主体のデータ流通を前提に、国はその環境整備とオープンデータ化を推進することとしている。

同計画においては、重点項目として、「国民生活で便益を実感できる、データ利活用」が掲げられており、この実現のための取組の1つとして、「官民におけるデータの徹底活用」が挙げられている。当該取組においては、国等が各種ルールやガイドライン、データ連携プラットフォーム等の整備を推進することにより、官民データ基本法で事業者が講じることとされている、「自らが保有する官民データであって公益の増進に資するもの」を国民にとって容易に利用できるようにするための措置を促進することとされている。同計画においては、特にモビリティ関連データや、国土交通分野の産学官のデータなどが取組を進める分野として挙げられている。

データを保有する各事業者によってこのような措置が取られるようになり、様々なデータが事業者間で共有されるようになることで、各企業が利用可能なデータが拡大し、ひいては各企業経営におけるデータ活用の拡大につながることが期待される。

イ 欧州データ戦略

また、欧州委員会が2020年2月に公表した、「欧州データ戦略」においても2030年までに欧州のデータ空間を一つとする計画の概要が示されている(図表3-2-3-1)。

図表3-2-3-1 欧州データ戦略の概要
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」

当該計画は、欧州単一市場全体のデータの活用、生産性向上、競争市場の拡大、透明性のあるガバナンス、公共サービスの改善等、データ経済への包括的アプローチに寄与することを目的とするものである。当該戦略においては、共通データ空間と部門(セクター)別データ空間を設け、非個人データへのアクセスと共有を改善し、クラウド機能を強化する一方で、個人データと非個人データに対するユーザーコントロールを改善すること等を柱としている。この戦略における4つ目の柱として、戦略的セクター及び公共分野における欧州共通の分野別データ空間の整備を行うこととしており、対象として製造業、環境・気象、交通など9分野が掲げられている。

日本における取組と同様、事業者間でのデータ共有の枠組みの構築を目指すものであるが、対象とする分野を幅広く明示するなど、より踏み込んだものとなっていると言えるだろう。

ウ 民間企業における取組

政府の取組の他に、民間企業においても同様の動きが出始めている。例えば2018年12月にNTTが公表したラスベガス市でのスマートシティの取組においても、収集した各種データをラスベガス市が所有することとされる9など、企業によるデータの囲い込みとは一線を画す動きが見られている。

さらに、地方においても、このようなデータの共有に似た動きが見られつつある。

武蔵大学の庄司昌彦教授は、「地方豪族企業」として、特定地域に立地し、地域内の利用者に対して生活に必要となる、購買、移動、消費に関する各種サービスを提供している企業の存在を指摘している(図表3-2-3-210

図表3-2-3-2 「地方豪族企業」の例
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」

この「地方豪族企業」は、多様なサービス提供を通じて、地域内のデータを一元的に収集・蓄積しているが、それらのデータを自社内で連携させることに加えて、例えば地元行政機関の有するオープンデータと組み合わせることで、中心市街地や観光産業の活性化、ひいては災害対応など、より高度なサービスを提供できる可能性がある。地域におけるデータ利活用における鍵を握る存在といえる。

このように官民で取組が進められているデータ共有の枠組みに関しては、その枠組みにおいてどのように企業が収益を上げるか、また、データを提供する消費者や企業にとってどのように納得感を得やすい構造とするかなど、解決するべき課題は多いものの、枠組みの構築によりデータの活用を今以上に活発化させることが期待されることから、今後の取組の進展を注視していく必要があるだろう。



8 https://cio.go.jp/data-basis別ウィンドウで開きます

9 トヨタ自動車、日本電信電話(2020)「NTTとトヨタ自動車、業務資本提携に合意」(https://www.ntt.co.jp/news2020/2003/200324b.html別ウィンドウで開きます

10 庄司昌彦、永井公成(2016)「「地方豪族」が縮小時代の地域情報化を担う」(http://www.glocom.ac.jp/opinionpaper/op08別ウィンドウで開きます)庄司昌彦(2018)「官民データ活用に向けた「地方豪族企業」の考察」(http://www.eco.shimane-u.ac.jp/ssi2018/manu/ren01_02.pdfPDF

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