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第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第3節 パーソナルデータ活用の今後

(2)パーソナルデータ流通の鍵として期待される情報銀行

ア 企業の意識

パーソナルデータの取扱いに関する企業と消費者の意識の違いのバランスをとるための仕組みとして、本節の冒頭で紹介した情報銀行の取組が挙げられる。情報銀行についてはサービスが始まったばかりであるが、この個人主導のデータ流通ともいうべき新しいデータ利活用の仕組みは、個人データの利活用を進めていくための基盤として期待されているところである12

この情報銀行の取組について、我が国の企業及び消費者はどのような意識を有しているのだろうか。

先に分析を行ったアンケートにおいて、情報銀行やPDSについての企業の認識を尋ねている(図表3-3-4-2)。まず、これらの新たなデータ活用モデルの認知について米国、ドイツ及び日本の回答者に尋ねたところ、日本では4割弱の回答者が何らかの形(「具体的な内容も含めて、知っている」、「知っているが、具体的な内容までは知らない」又は「名前は聞いたことがある」)で認知していた一方で、米国及びドイツではその割合は半分を超えていた。さらに、具体的な内容も含めて知っている回答者については、日本においては1割を切った一方、米国及びドイツでは2割前後であった。日本の回答者について前回調査と比較すると、ほとんど認知度の変化はなかった。

図表3-3-4-2 企業のパーソナルデータの流通に係る新たな取組の認知
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
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また、PDSが今後のデータ流通・利活用を促進させることを期待するかについて企業に尋ねたところ、「期待している」と回答した者の割合は日本では3割程度にとどまったのに対し、米国では4割、ドイツで半数近くとなった(図表3-3-4-3)。

図表3-3-4-3 企業のパーソナルデータストアに対する期待
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
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イ 消費者の意識

一方で、消費者のこうしたサービスの利用意向を見ると、我が国においては、「利用したくない」と回答した者の割合と、「利用したい」と回答した者の割合が同程度となっており、「利用したい」と回答した者の割合も5割を超える米国及びドイツや、8割近い中国に比べて低くなっている(図表3-3-4-4)。しかしながら、前回調査と比較すると、日本を含めた各国において「利用したい」と回答した者が増加し、「利用したくない」と回答した者が減少するなど、利用意向が高まる結果となっている。特に中国においてはこれらの仕組みの利用意向が急激に高まりつつある。

図表3-3-4-4 消費者のパーソナルデータストアや情報銀行の利用意向
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
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情報銀行やPDSを利用したくないと回答した回答者に対して利用したくない理由を尋ねると、日本においては、「自分で情報を集約・管理すると漏えいした場合が不安だから」、「自らの責任範囲や負担が大きいから」、「既存の仕組みで問題ないと思うから」、という項目を挙げる回答者が多かった(図表3-3-4-5)。前回調査と比較すると、日本、米国及びドイツにおいて自分で管理した場合の漏えいすることへの不安を理由に挙げた回答者の割合が増加していた。

図表3-3-4-5 パーソナルデータストアや情報銀行を利用したくない理由
(出典)総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」
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これらの結果からは、情報銀行やPDSといった新たなデータ流通のサービスについて、消費者は前回調査時に比べると利用することに前向きになっているのに対し、企業側にはこれらのサービスの認知が進んでおらず、また、期待も大きくなっていないことが分かる。さらに、消費者側の使いたいと思わない理由に着目すると、自らの責任範囲や負担の大きさ、漏えい時のリスクといった点でこうしたサービスを受け入れられない消費者が一定数いることが分かった。

こうした点を踏まえると、今後我が国において、消費者の情報銀行等への利用意向の高まりとともに多くのパーソナルデータが預託され、企業が利用可能なパーソナルデータの増大につながることが推測される。しかしながら、本サービスの企業及び消費者による利用の拡大を阻害する要因があることも事実であることから、情報銀行がパーソナルデータのさらなる流通に寄与するためには、企業側に対しては利用することのメリットを周知すること等を通じた認知の向上を図りつつ、消費者に対しても、より簡便な形で、かつ、漏えいの心配なく安心して使えるような方法でサービスを提供していくことが重要であると考えられる。



12 総務省(2020)「データの流通環境等に関する消費者の意識に関する調査研究」有識者ヒアリング(東洋大学生貝直人准教授)に基づく。

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