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第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

3 電気通信インフラの安全・信頼性の確保

(1)電気通信設備の技術基準等に関する制度の整備・運用の在り方

ア IoTの普及に対応した電気通信設備の技術基準等に関する制度整備

近年のIoTの普及に伴う通信ネットワークの高度化や利用形態の多様化を踏まえ、様々なIoTサービスを安心して安定的に利用できるネットワーク環境の確保を目的として、2017年(平成29年)12月から、情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会において、「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」について検討を行っている。11

同委員会の検討結果として取りまとめられた情報通信審議会からの一部答申12を踏まえ、2019年(令和元年)7月に情報通信ネットワーク安全・信頼性基準(昭和62年郵政省告示第73号)の改正を行い、通信ネットワークにおいてソフトウェアの役割が高まる中で、通信設備に係るソフトウェアの信頼性向上に向けた電気通信事業者の取組を推奨する規定を整備した。また、電気通信事業法施行規則(昭和60年郵政省令第25号)の改正を行い、仮想化技術の導入により機能の一部がソフトウェア制御により実現される状況も生じている中で、通信ネットワークの構成の全容を適切に把握するための規定を整備した。電気通信主任技術者及び工事担任者の資格制度については、2019年(令和元年)10月に具体的な見直しに関する検討状況を同委員会へ報告し、2020年(令和2年)に電気通信主任技術者規則(昭和60年郵政省令第27号)及び工事担任者規則(昭和60年郵政省令第28号)の改正等に向けた取組を進めている。

答申後も引き続き同委員会を開催し、第三次検討として2019年(令和元年)6月から2020年(令和2年)3月にかけて、①通信ネットワークの本格的なソフトウェア化・仮想化の進展に対応した技術基準等の在り方及び②災害に強い通信インフラの維持・管理方策を主な検討課題として審議が進められた。

①については、2030年頃の通信ネットワーク像を描くとともに、その実現に向けて、通信ネットワークにおける仮想化技術等の導入はその技術開発と共に段階的に進展することなどの特徴を時系列で4つのモデルに整理した。また、このモデル分けに従って各時点で想定される課題やその対応策について論点整理が行われた。具体的には、5G導入直後の通信ネットワークでは交換設備などの主要な機能の仮想化を前提としたシステム構築が本格的に進展することが想定されることを踏まえ、当面の対応として、通信ネットワークの安全・信頼性を確保するため、特にソフトウェアに関する信頼性向上のために取り組むべき事項を追加することなどについて、情報通信ネットワーク安全・信頼性基準の改正の必要性が示された。中長期的には、多様な事業形態やサービス形態において提供される「機能」に着目した制度の検討が求められ、仮想化技術等の導入によるイノベーション・新ビジネスの創出の観点も考慮しつつ、仮想化技術の進展や標準化動向及び国内外の電気通信事業者による導入の動向を踏まえながら、引き続き、同委員会において検討を進めていくことが適当とされた。

②については、2019年(令和元年)に発生した房総半島台風(台風第15号)等による通信被害も踏まえ、商用電源による電力の供給が長時間にわたり停止した場合における通信インフラの維持・管理方策について検討し、より実効的な形で通信事業者の通信ネットワーク強靱化を図るため、予備電源等を更に整備することが適当とされた。具体的には、災害時の対応拠点となる都道府県庁や市町村役場、そして災害時の医療活動の中心となる災害拠点病院をカバーする携帯電話基地局などについて、少なくとも24時間にわたる停電を考慮した対策を講じることなど情報通信ネットワーク安全・信頼性基準を改正することが適当とされた。

これらの検討結果は、2020年(令和2年)3月に同委員会の第三次報告として取りまとめられ、同月に情報通信審議会から一部答申を受けた13

イ 災害時における通信サービスの確保

近年、我が国では、地震、台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、火山噴火等の自然災害が頻発しており、大きな被害を受けている。直近においても、平成30年7月豪雨、台風第21号、平成30年北海道胆振東部地震等において、停電による影響、通信設備の故障、ケーブル断等により通信サービスに支障が生じた。こうした累次の災害対応における振り返りを行い、これを踏まえ、災害時における通信サービスの確保に向けて、総務省と電気通信事業者との間で平素から体制を確認し、より適切な対応を行うことができるよう、2018年(平成30年)10月から「災害時における通信サービスの確保に関する連絡会」を開催している。同連絡会では、災害時における通信サービスの確保に関する当面の課題として、連携・体制面等での課題、迅速な復旧のための課題、迅速な情報把握等についての課題等について意見交換を行っている。

また、令和元年房総半島台風及び令和元年東日本台風(台風第19号)等により大規模な被害が発生し、長期間にわたる停電や通信障害、それらの復旧プロセス等、国・地方自治体等の災害対応を通じて様々な課題が指摘されたことを受け、省庁横断的に議論する場として、2019年(令和元年)10月、政府に「令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証チーム」が立ち上げられた。本検証チームでは長期停電や通信障害、避難行動など現場における初動・応急復旧の過程において生じた様々な課題を検証する必要があることから、政府のみではなく、被災自治体や関係事業者も含めた様々な検証作業に加え、電力、通信、災害対応等の分野の有識者も交えた実務者検討会が開催された。

本検討会にて、様々な立場・観点から改善すべき論点を抽出、論点ごとの対応策を議論し、2020年(令和2年)1月に中間取りまとめ14が行われた。本中間取りまとめでは、携帯電話基地局等の非常用電源を長時間化すること等が盛り込まれた。携帯電話基地局等の非常用電源の長時間化等については、情報通信審議会情報通信技術分科会IPネットワーク設備委員会において、具体的な制度改正に向けた検討が行われた。

ウ 電気通信事故報告の分析・検証

電気通信事業者の増加、提供サービスの多様化・複雑化やソフトウェア化・仮想化等による通信ネットワークの高度化・複雑化に伴い、事故の要因も多様化・複雑化してきていることから、電気通信事故の防止に当たっては、事前の対策に加え、事故発生時及び事故発生後の適切な措置が必要である。総務省は、事故報告の検証を行うことにより、再発防止に向けた各種の取組に有効に活用するため、2015年(平成27年)から「電気通信事故検証会議」を開催し、主に電気通信事業法に定める「重大な事故」及び電気通信事業報告規則に定める「四半期報告事故」に係る報告の分析・検証を実施している。

同会議では、2018年度(平成30年度)に発生した電気通信事故の検証結果等を取りまとめ、2019年(令和元年)8月に「平成30年度電気通信事故に関する検証報告」を公表している。



11 同委員会においてこれまで検討を行い取りまとめた結果については、情報通信審議会から2018年(平成30年)9月に一次答申、2019年(令和元年)5月に二次答申を受けている。

12 「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」に関する情報通信審議会からの一部答申(2019年(令和元年5月21日)):
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000182.html別ウィンドウで開きます

13 「IoTの普及に対応した電気通信設備に係る技術的条件」に関する情報通信審議会からの一部答申(2020年(令和2年3月31日)):
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000201.html別ウィンドウで開きます

14 令和元年台風第15号・第19号をはじめとした一連の災害に係る検証レポート(中間とりまとめ・台風第15号関係):
https://www.soumu.go.jp/main_content/000665016.pdfPDF

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