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第1部 特集 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第4節 5Gが促す産業のワイヤレス化

(6)安心・安全分野

ア 教育分野が抱える課題
(ア)災害時の迅速かつ的確な対応

我が国の国土の面積は全世界の0.3%に過ぎないが、過去に全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の約20%が日本で発生し、全世界の活火山の約7%が日本にある。また、全世界における災害の被害金額の約18%が日本での被害金額となっているなど、日本は世界でも有数の自然災害発生国である。また、近年は台風やゲリラ豪雨等による河川越水や道路冠水などの水害も頻発している。

こうした自然災害の最大規模の外力に対して、ハード・ソフトの両面から災害時の被害を最小化するため備えを準備するとともに災害時に迅速かつ的確な対応を行うことが求められている。地域住民に対して避難情報を発令する際の判断材料として、現場の状況をタイムリーに把握し、情報提供や混乱時における避難誘導等に資する取組が課題となっている。

(イ)遠隔監視・検知

我が国では、身近な住宅や街頭における犯罪から地域住民を守り、ターミナル、商業施設、道路、公園、住宅、学校等あらゆるエリアにおける安全・安心向上に資する環境整備や犯罪に強いまちづくりの推進が課題となっている。また、大規模イベント開催時における混雑や事故防止に資するセキュリティ強化策も課題となっている。

このような社会的要請や需要増に応えるべく民間企業主体の取組(建物や施設における巡回、監視、管理業務や建物の入出管理、イベントや商業施設における誘導や整理など)が進んでいるものの、従前の監視・警備業務や手法のように24時間365日継続した警備を前提とした人に依存するものとなっており、人員不足という構造的な課題に直面している。

イ 現状のICT活用に係る取組

安心・安全な街づくりの整備に向けて、防災・防犯分野において、ICTを活用した様々な取組が進められてきている。防災分野では、センサーやカメラ等による防災情報収集が行われている。例えば、台風や豪雨時の河川越水や道路冠水対策として、迅速な状況把握や予兆検知が一定の精度でできるようになると、行政によるタイムリーな住民向け情報(警告、避難指示等)の提供や避難誘導が可能となる。そのため、河川監視カメラシステムを導入し、身近な河川の状況を映像でリアリティをもって伝え、地域住民の避難誘導等に活用する取組が増えている。他方、住民向け情報提供の手段としては、エリアメールやLアラート、IP告知端末やスマートテレビ等の多メディアへの緊急情報配信等が行われている。

防犯分野においては、関係省庁・機関と各自治体等の取組において、道路、公園等の公共施設や住居の構造・設備・配置等について、住民が犯罪被害に遭いにくい「防犯まちづくり」を推進しており、街中に設置したカメラ・センサーによる監視や防犯メール等による児童・生徒の見守り事業等が進められている。また、民間サービスでは、人員不足に対応するためにも、不審者の侵入を未然に防いだり、火災の発生などを素早く発見したりするため、警備ロボット等の導入といった取組が行われている。

ウ 安心・安全分野における5Gのユースケース
(ア)遠隔監視・検知(防災分野)

河川等に設置した固定の高精細カメラやドローンに搭載したカメラからの高精細映像を、5Gでリアルタイムに伝送することで、災害状況や遭難状況の把握が可能になり情報行動の効率化等を図ることができる。特に、5Gの超高速・大容量の特長を活かして配信された4K・8Kなどの高精細映像と他の多種多様なセンサー情報を統合的に扱うことで、行政機関等は氾濫等の予測精度を高めたり、限られた人員を適材適所に派遣できたりするようになる。また、何よりも地域住民向けに、現場の状況を鮮明にかつリアリティをもって伝えることで、避難情報として迅速かつ的確に伝達することができる。今後は、5G対応端末の普及により、エリアメールやLアラートのように地域住民に対して直接映像を届けたり、リアルタイムな解析結果等の付加情報を提供したりすることも想定される。

◎遠隔監視(防災分野)の取組事例

2019年度の総務省5G総合実証試験では、山岳遭難者の救助支援を想定し、ドローンからの4K高精細映像を救助本部と現場に向かう救助隊員に5Gでリアルタイム伝送し、現場の状況確認及び登山者の状態把握やドローン搭載の拡声器による声掛けを行うとともに、複数の救助隊員からの4K高精細映像を本部にリアルタイム伝送する実証試験を実施した。また、被災時の避難誘導を想定して、北九州学研都市において、5Gの超高速・大容量及び超低遅延通信の特長を活かし信号交差点をスマート化し、災害発生個所を把握した信号機の制御や、被災者端末への避難誘導情報の配信の試験を実施した。

図表2-4-3-11 山岳登山者見守りシステムの概要
(出典)総務省作成資料
(イ)遠隔監視・検知(防犯分野)

施設内等での監視や住民の見守りなどにおいて、5Gを介した高精細カメラの映像の伝送により、従来の4G、Wi-Fiで伝送可能な解像度(HD・Full HD等)では得られなかった詳細な情報が得られる。具体的には、高解像度かつ高いフレームレートでの映像伝送により、従来と比して数倍の範囲の映像が撮影できるため、近方では人や顔の認識範囲が広がる。広域の監視においては、遠方でも人の明確なシルエットがわかるなど、同時に多数の対象の識別能力も高まる。監視対象が移動しても映像中に映る時間も長くなることから、認識や検知の精度も高まり、肉眼による監視・警備業務を補うことができる。また、認識範囲や映る時間が長くなることで、監視に必要なカメラ数の削減にもつながったり、例えばイベント向けセキュリティエリアを簡易的に構築できたりするというメリットもある。警備用のロボット・ドローンに搭載したカメラ映像を5Gで転送することで、監視センター等から遠隔制御もできるようになる。

◎遠隔監視(防犯分野)の取組事例

KDDI・KDDI総合研究所・セコムは、東大阪市の協力のもと、東大阪市花園ラグビー場 において、5Gを活用した、AI・スマートドローン・ロボット・警備員が装備したカメラによる、スタジアム周辺の警備の実証実験を実施した(2019年8月)。KDDIのスマートドローン、セコムの自律走行型巡回監視ロボット「セコムロボットX2」及び警備員に装備した各カメラからの4K映像を、5Gを経由してセコムの移動式モニタリング拠点「オンサイトセンター」へ伝送した。これにより、広範囲なエリアを高精細な映像で確認でき、不審者の認識から捕捉など一連の警備対応が可能となることを実証した。

さらに、5Gを経由してセコムの「オンサイトセンター」で受信した4K映像を、AIを活用した人物の行動認識機能で解析し、異常を自動認識して管制員に通知することで、対象警備エリアにおける異常の早期発見と、緊急対処が可能になることを実証した。

図表2-4-3-12 遠隔監視の取組事例(KDDI)
(出典)KDDI(株)提供資料
エ 期待される効果等

防災分野では、5Gの特長を活かしたハード・ソフト面での整備と普及により、災害発生の初動時・復旧時から平常時等の時間軸において、情報収集から情報発信までの一連のプロセスが連動した次世代の防災システムへと発展することが期待される。これにより、限られた人員と時間の中で、迅速かつ正確な情報提供や避難誘導等を実現し、人命を含む被害の抑制につながることが期待される。

防犯分野では、通信の高速大容量化・モバイル化やセンシングデバイスの技術進化を取り込み、画像分析やAIを扱う高度なレベルへ進化しており、人(警備員や監視員)主体の監視から、高精細映像やAIによる高精度な監視へと開発が進められている。新たな技術と5Gの連携による有用性は実証されつつあり、今後監視精度の飛躍的な向上によって、事故や事件の未然防止や被害拡大防止を、より少ない人員で効率的に実現することが期待される。

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