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第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

(2)青少年のインターネット利用環境の整備

スマートフォンやアプリ・公衆無線LAN経由のインターネット接続が普及し、フィルタリング利用率が低迷している状況に対応するため、フィルタリングの利用の促進を図るための所要の措置を講ずる「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の一部を改正する法律」(平成29年法律第75号)が2018年(平成30年)2月に施行された。改正法では、改正法前の義務20に加え、携帯電話事業者及び代理店に対して、新規・変更契約時に①契約締結者又は携帯電話端末等の使用者が18歳未満か確認、②フィルタリング説明(青少年有害情報を閲覧するおそれ、フィルタリングの必要性・内容を保護者又は青少年に対し、説明)、③契約とセットで販売される携帯電話端末等について、販売時にフィルタリングソフトウェアの設定を行うことを義務付けた。また、フィルタリングサービスの提供義務の対象機器を携帯電話・PHSに加え、データ通信用端末(タブレット等)に拡大した(図表6-2-4-2)。

図表6-2-4-2 青少年インターネット環境整備法(改正の概要)

また、改正後における関係者の取組状況等については、「青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース21」において、契約時のフィルタリング申込み・有効化措置等の促進、フィルタリングを始めとするペアレンタルコントロールの必要性に係る認識の醸成及びフィルタリングサービスの使いやすさの向上について議論が行われ、2019年(令和元年)8月に「青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策22」を取りまとめ、公表した。

その後、同タスクフォースにおいて、「青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策」に基づき関係者における取組状況のフォローアップが行われている。

政策フォーカス 電話リレーサービスの実現に向けて

1 背景

電話は、国民の日常生活及び社会生活において、遠隔地にいながら、リアルタイムな意思疎通を可能とする基幹的な手段であり、特に、緊急通報を利用することのできる手段として国民の生命・財産を直接的に保護する等、重要な役割を担っている。

一方、電話は専ら音声による通信サービスであることから、聴覚障害者等(聴覚の障害だけでなく、言語機能又は音声機能の障害により、音声言語により意思疎通を図ることに支障がある者も含む)は、電話を利用するために発話等を代替する介助を要し、単独で利用することが困難である。その代替手段として、メール、チャット、SNSなどを利用することは可能であるが、予約等を電話でのみ受け付けているサービスや、予約はメールやホームページ経由で受け付けているが予約の変更やキャンセルは電話でのみで受け付けているサービスが存在すること、また、至急の連絡や確認が必要な場面も存在することから、聴覚障害者等はそうしたサービス利用などに際して、店舗等への実際の往訪や家族等に代わりに電話をかけてもらうなどの代替手段を強いられる状況にある。このように、聴覚障害者等は電話を利用した日常生活のコミュニケーションや行政手続、職場における業務上のやりとり等に困難を伴うといった課題が存在しており、自立した日常生活及び社会生活の確保に支障が生じている状況にある。

また同様に、聴覚障害者等は、緊急時に電話により必要な救助の要請等が出来ない可能性があり、聴覚障害者等による電話の利用の困難性は生命に関わる課題でもある。

こうした課題を踏まえ、聴覚障害者等の日常生活及び社会生活における障壁を除去する観点からも、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を実現することが急務である。

聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を図るためには、手話通訳者等が通訳オペレータとなって手話又は文字と音声を通訳することにより、聴覚障害者等と聴者の意思疎通を仲介する「電話リレーサービス」が有効である。電話リレーサービスは、聴覚障害者等と通訳オペレータの間の通信(例:手話のリアルタイムな映像伝送)及び通訳オペレータと相手方の通信(電話)の両方が成り立って初めて実現するサービスであり、手話の映像伝送等を行う上で、聴覚障害者等がブロードバンドサービスを低廉かつ安定的に利用できる環境が整備されていることが前提となるところ、近年の技術進展により、聴覚障害者等がスマートフォンやタブレット等の汎用的な端末を用いて、ブロードバンドサービスを通じて手話のリアルタイムな映像伝送等を低廉かつ安定的に行うことができるようになり、電話リレーサービスを主たる手段として、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を実現することが可能な環境が整いつつある。

図表1 電話リレーサービスの概要

この環境変化を受け、我が国においては、現在、一部の企業や地方公共団体等が、利用用途を限って電話リレーサービスに相当するサービスを提供している例があるものの、広く聴覚障害者等を対象として電話リレーサービスを提供する事業は、(公財)日本財団が2013年度(平成25年度)より実施するモデルプロジェクトのみとなっている。当該モデルプロジェクトは、利用者数を拡大しつつあるものの、提供されるサービスの内容等に制約(例:常時(24時間/365日)のサービス提供や緊急通報受理機関への接続等を実現できていない)があるといった課題が存在する。

2 政府における検討状況

1.の背景や、国会における議論を踏まえ、公共インフラとしての電話リレーサービスの適正かつ確実な提供を実現するため、総務省は2019年(平成31年)1月、デジタル活用共生社会実現会議(厚生労働省と共催)のICTアクセシビリティ確保部会の下で、「電話リレーサービスに係るワーキンググループ」を開催し、専門的な検討を行った。

同ワーキンググループでの検討の結果、2019年(令和元年)12月に公表された報告書において、「公共インフラとしての電話リレーサービスの実現に必要となる制度整備については、国は、電話リレーサービスの実現に向け、必要となる制度整備について、検討を進めるべきである。」とされたことを受け、総務省は「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」を第201回国会(常会)に提出し、国会審議を経て2020年(令和2年)6月5日に成立、同12日に公布されたところである。

3 「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」の概要

聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(以下「本法律」という。)は、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を図るため、国等の責務及び総務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、聴覚障害者等の電話による意思疎通を手話等により仲介する電話リレーサービスの提供の業務を行う者の指定に関する制度及び当該指定を受けた者の当該業務に要する費用に充てるための交付金に関する制度を創設する等の措置を講ずるものである。

図表2 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律の概要

主な規定内容は以下のとおりである。

(1)総則

本法律の目的並びに「聴覚障害者等」及び「電話リレーサービス」等の定義を定めている。

また、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に当たっては、国等の関係主体が政策的意義を共有し、相互に連携した上で、電話リレ−サービスの提供を含む措置を総合的に講ずる必要があることから、関係主体の責務、総務大臣による基本方針の策定について定めている。

(2)指定法人に関する制度の創設

聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を図るためには、電話リレーサービスの適正かつ確実な提供を実現することが最も重要である。

特に、聴覚障害者等が聴者と同等の料金水準で電話を利用できるようにするためには、通訳オペレータの人件費をはじめとするコストを賄う観点から、電話リレーサービスを提供する者における安定的な財政的基盤の確保が課題となることから、電話リレーサービスを適正かつ確実に行うことができる者に対し、電話リレーサービス提供業務に要する費用に充てるための交付金を交付する制度を創設する等の措置を講ずることが必要である。

このため、総務大臣は、電話リレーサービス提供業務を適正かつ確実に実施することができる一般社団法人又は一般財団法人を、その申請により、「電話リレーサービス提供機関」として全国を通じて一個に限り指定することができることとするとともに、所要の業務規律(電話リレーサービス提供業務規程の認可等)・監督規律(監督命令等)を設けている。

また、電話リレーサービス提供業務に要する費用に充てるための交付金を、総務大臣の認可を受けて、電話リレーサービス提供機関に交付することとし、当該交付金に係る負担金については、電話リレーサービスの実現により電話の利便性が高まり、電話提供事業者が直接受益することに鑑み、事業の規模が総務省令で定める基準を超える電話提供事業者(特定電話提供事業者)に納付を義務付けることとしている。

その際、総務大臣は、特定電話提供事業者から負担金を徴収し電話リレーサービス提供機関に交付金を交付する業務を適正かつ確実に実施できる一般社団法人又は一般財団法人を、その申請により、「電話リレーサービス支援機関」として全国を通じて一個に限り指定することができることとするとともに、所要の業務規律(電話リレ−サービス支援業務規程の認可等)・監督規律(監督命令等)を設けている。

以上の流れをまとめると、指定法人(電話リレーサービス提供機関、電話リレーサービス支援機関)の関係は以下のとおりである。

図表3 電話リレーサービスに関する制度の概要

(3)その他規定

本法律は、関係主体の責務や基本方針に関する事項、提供機関及び支援機関に対する各種の業務規律・監督規律を規定しているところ、その他の規定として、これらの制度運用を円滑に図るための全般的な措置や業務規律の実効性を担保するための罰則について定めている。

法律施行後、電話リレーサービス提供機関及び電話リレーサービス支援機関の指定等を経て、2021年度(令和3年度)中に公共インフラとしての電話リレーサービスを実現することを目指し、総務省は、厚生労働省等と連携して、引き続き取組を推進することとしている。



20 携帯電話事業者及び代理店に対して、契約者又は端末(携帯電話・PHS)の使用者が青少年(18歳未満)の場合、(保護者が利用しない旨を申し出た場合を除き)フィルタリングサービスの利用を条件として、通信サービスを提供することの義務付け等

21 青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース:青少年にとっての安心・安全なインターネット利用環境を整備するべく、インターネットを適切に利用するための啓発活動や、青少年を保護するための有効な手段であるフィルタリングサービスについて、携帯電話事業者、OS事業者、保護者等、各関係者の役割を踏まえた検討を行うことを目的として、2016年4月より開催。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ict_anshin/index_12.html別ウィンドウで開きます

22 青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース「青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策」の公表:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_03000296.html別ウィンドウで開きます

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