総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > 5Gの利用シナリオと主な要求条件
第1部 5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築
第1節 新たな価値を創出する移動通信システム

(1)5Gの利用シナリオと主な要求条件

2015年9月、ITUにおいて、5Gの主要な能力やコンセプトをまとめた「IMTビジョン勧告(M.2083)」20が策定された。その中で、5Gの利用シナリオとして、①モバイルブロードバンドの高度化(eMBB:enhanced Mobile BroadBand)、②超高信頼・低遅延通信(URLLC:Ultra Reliable and Low Latency Communications)、③大量のマシーンタイプ通信(mMTC:massive Machine Type Communications)の3つのシナリオが提示された(図表1-1-3-1)。ただし、5Gでは、単一のネットワークでこれらの全てのシナリオに対応する必要はなく、それぞれの利用シーンに応じて必要な性能を提供すれば良いとされている。それぞれの利用シナリオにおける主な要求条件について以下で説明する。

図表1-1-3-1 IMTビジョン勧告における5Gの利用シナリオ及び要求条件
(出典)IMTビジョン勧告(M.2083)
ア 超高速通信(eMBB)

4Gにおいては、通信速度が下りで最大1Gbps程度、上りで最大数百Mbps程度であったのに対し、5Gの要求条件では、下りで最大20Gbps程度、上りで最大10Gbps程度となっており、4Gの10倍以上の速度となることが見込まれている21。4G以上の高速大容量通信によって、4K/8Kなどの高精細映像をはじめ大容量コンテンツであっても高速に伝送されることが期待される。

イ 超低遅延通信(URLLC)

5Gにおける遅延は1ミリ秒程度とされており、4Gの10分の1程度に短縮されることが見込まれている。これによって、4Gでは安全性の観点から実現が難しいとされていた自動運転や遠隔でのロボット操作(リアルタイムでの操作やミッションがクリティカルなものなど)も5Gでは実現させることが可能となり、様々な産業・分野において移動通信システムの用途が広がっていくことが期待される。

ウ 多数同時接続(mMTC)

4Gにおいては、1q2あたり10万台程度の端末が同時に接続できるとされていたのに対し、5Gでは1q2あたり100万台程度の端末が同時に接続できるようになることが見込まれている。IoT時代において膨大な数のセンサーや端末が存在する場合(例:スマート工場、スマートメーター、インフラ維持管理)であっても、通信に支障が生じないことが期待される。

5Gは、4Gまでの移動体無線技術の進化の延長線上にある超高速通信だけでなく、超低遅延通信及び多数同時接続といった4Gまでには無かった新たな機能を持つ次世代の移動通信システムであり、これまでの人と人がコミュニケーションを行うことを想定したツールとしてだけでなく、身の回りのあらゆるモノがネットワークにつながるIoT時代のICT基盤として期待されている(図表1-1-3-2)。

図表1-1-3-2 IoT時代のICT基盤である5G
(出典)総務省作成資料

5Gは、IoT時代に多種多様なネットワークを包含する総合的なICT基盤として、様々な産業・分野において実装されることによって、業務の効率化や新たなサービスの創出など、従来の移動通信システム以上に大きな社会的インパクトを及ぼすものと期待されている。



20 Recommendation ITU-R M.2083 IMT Vision - Framework and overall objectives of the future development of IMT for 2020 and beyond

21 ただし、これらの速度はあくまで規格の性能要件であり、実際の通信速度(実効速度)は、端末の仕様や通信事業者のネットワーク設計等に依存する点に留意する必要がある。

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