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第2部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

2 電波利用の高度化・多様化に向けた取組

(1)第5世代移動通信システム

ア 5Gへの期待

無線通信技術の急速な進展と人々のワイヤレスサービスに対する利用ニーズの高度化、多様化に伴い、携帯電話・スマートフォンについては、3.9 世代移動通信システム(LTE)や第4世代移動通信システム(4G)の導入による通信速度の高速化と情報量の大容量化が進んできた。また、2020年(令和2年)からは、4Gの次の移動通信システムである5Gのサービスが日本でも開始されている。5Gによって、4Gを発展させた「超高速」だけでなく、遠隔地でもロボット等の操作をスムーズに行える「超低遅延」、多数の機器が同時にネットワークに繋がる「多数同時接続」といった特長を持つ通信が可能となる(図表6-3-2-1)。そのため、5Gは、あらゆる「モノ」がインターネットにつながるIoT社会を実現する上で不可欠なインフラとして大きな期待が寄せられている。

図表6-3-2-1 5Gの特長
イ 5Gの普及・展開に向けて

総務省は、5Gの2020年(令和2年)の実現に向けて、研究開発・総合実証試験の推進、国際連携・協調の強化、5G用周波数の具体化と技術的条件の策定、5G投資促進税制の創設といった取組を推進してきた。

研究開発については、2015年度(平成27年度)から5Gの実現に不可欠な要素技術の研究開発に取り組んでいる。2020年度(令和2年度)は5Gの普及・展開及び更なる高度化に向けて、5G基地局の小型化・連携・相互運用を実現する技術、高エネルギー効率・高信頼性を実現する技術及び複数の事業者の基地局を共用化する技術について研究開発を実施している。

また、2017年度(平成29年度)から2019年度(令和元年度)にかけて、実利用を想定した試験環境を構築し、様々な利活用分野の関係者が参加する5G総合実証試験を実施した。特に、2019年(平成31年)1月には、地域発の発想による5Gの利活用アイデアを募集する「5G利活用アイデアコンテスト」を開催し、この結果を踏まえて、2019年度(令和元年度)は5Gによる地方の抱える様々な課題の解決に力点を置いた5G総合実証試験を実施した。

さらに、2020年度(令和2年度)からは5Gを活用した具体的なユースケースの創出に向け、地域課題解決に資するローカル5G等の開発実証を実施している。

5Gは経済や社会の世界共通基盤になるとの認識のもと、国際電気通信連合(ITU)における5Gの国際標準化活動に積極的に貢献するとともに、欧米やアジア諸国との国際連携の強化にも努めている(図表6-3-2-2)。特に、2019年(令和元年)11月の世界無線通信会議(WRC-19)において、5G等で使用することができる国際的な移動通信(IMT: International Mobile Telecommunication)用周波数の拡大に向けた検討が行われ、我が国については、新たに計15.75GHz幅(24.25-27.5GHz、37-43.5GHz、47.2-48.2GHz、66-71GHz)がIMT向けの周波数として合意された。

図表6-3-2-2 各国・地域の5G推進団体

さらに、5Gに使用する周波数を速やかに確保するため、国際的な動向等を踏まえつつ、情報通信審議会において、5G周波数確保に向けた考え方、既存無線システムとの周波数の共用、5Gの技術的条件の策定等に関する検討を進めた。2018年(平成30年)7月に、情報通信審議会から5Gの技術的条件について答申を受け、2019年(平成31年)1月に5Gの導入に必要な制度整備を行った。また、2019年(平成31年)1月に「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針」を制定するとともに、開設計画の認定申請の受付を開始。2019年(平成31年)4月に申請のあった携帯電話事業者に対して5G用周波数を割り当てた。周波数の割当てに際しては、2年以内に全都道府県で5Gサービスを開始することを条件としており、今後順次、全国的に5Gが展開される予定である。加えて、早期に5Gの広域なエリアカバーを実現し、様々な産業での5Gの利活用を加速するために、現在4Gで用いられている周波数(既存バンド)を5Gでも利用することを可能とするべく、情報通信審議会において検討を進めた。既存バンドの5G化については、その技術的条件について、2020年(令和2年)3月に情報通信審議会から答申を受けたことを踏まえ、2020年(令和2年)夏頃に必要な制度整備を行う予定。

現在、IoTの普及に代表されるように通信ニーズの多様化が進んでおり、5G時代においては、より一層の多様化が進むと想定されている。そのため、総務省では携帯電話事業者による日本全国でのサービス提供に加え、地域や産業の個別ニーズに応じて、地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステムであるローカル5Gについて2019年(令和元年)12月24日に一部の周波数帯で先行して制度化を行った(図表6-3-2-3)。また、制度化に併せて、ローカル5Gの概要、免許の申請手続、事業者等との連携に対する考え方等の明確化を図るため、2019年(令和元年)12月に「ローカル5G導入ガイドライン」を策定・公表した。

図表6-3-2-3 ローカル5Gのイメージ

また、地域の企業等の様々な主体によるローカル5G等を活用した地域課題解決を実現するため、周波数のさらなる拡充を推進する必要がある。そのため、4.6-4.9GHz及び28.3-29.1GHzをローカル5Gに拡充するため、2019年(令和元年)10月から情報通信審議会の下の「ローカル5G検討作業班」において、ローカル5Gの技術的条件等について検討を行っており、2020年(令和2年)12月頃に必要な制度整備を行う予定である。

これに加えて、5Gインフラの早期普及に資する5G基地局の前倒し整備及び地域課題解決促進に資するローカル5G整備を支援するため、2020年度(令和2年度)の新規税制として「5G投資促進税制」を創設した。具体的には、法人税・所得税の特例措置として、全国5G基地局及びローカル5Gの一定の設備について、15%の税額控除又は30%の特別償却を認めることとし、固定資産税の特例措置として、ローカル5Gの一定の設備について、取得後3年間の課税標準を2分の1とすることとしている。

ウ 5Gを支える光ファイバの整備

このような5Gが地方を含む全国各地で早期に利用されるためには、中継回線としても利用される光ファイバの整備を促進する必要がある。現在、我が国の光ファイバの整備率(世帯カバー率)は2019年(平成31年)3月末で98.8%となっているが、過疎地域や離島などの地理的に条件不利な地域では整備が遅れている(図表6-3-2-4)。2020年(令和2年)の5Gの商用化を受けて、今後は中継回線としてのニーズも高まることが想定され、光ファイバの全国的な整備は、ますます重要になっている。

図表6-3-2-4 2019年(平成31年)3月末の光ファイバの整備状況(推計)

こういった背景を踏まえ、総務省は2019年度(令和元年度)から、電気通信事業者等が5G等の高速・大容量無線局の前提となる光ファイバを整備する場合に、その事業費の一部を補助する「高度無線環境整備推進事業」を実施している。また、2020年度(令和2年度)においては、新型コロナウイルス感染症への対応を進め、「新たな日常」を取り戻す上で、遠隔教育をはじめ、遠隔医療、テレワークを支える情報通信環境の整備が急務となっていることから、第2次補正予算として本補助事業に501.6億円を計上した。これにより、「地域の光ファイバ整備」を加速し、2021年度(令和3年度)末までに市町村が希望する全ての地域で光ファイバを整備する予定である(図表6-3-2-5)。

図表6-3-2-5 高度無線環境整備推進事業 令和2年度2次補正概要
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