日本は便利であるが故に、かえってデジタル化が進まないとの指摘がある4。例えば、都心は公共交通機関が充実しており、タクシーが捕まらなくて困ることはないためライドシェアを利用する必要性に乏しい、現金の信頼性が高い故にキャッシュレスの普及が進まない、世界的に高水準の教育システムが確立しているからこそ教育のデジタル化が進まない、といったようにデジタル化が思うように進まない現状が我が国に存在するとのことである。
しかしながら、世界的にデジタル変革の波が押し寄せ、また、人口減少や少子高齢化によって、我が国の地域社会は存続の危機にさらされている。変革を推し進めるには、現状に満足しないよう「空気を変える」ことが必要であるという。
2021年に延期となった東京2020大会や2025年の大阪・関西万博の開催が、「空気を変える」絶好の機会であると期待が集まっているが、それ以前に、新型コロナウイルス感染症の流行が、経済活動や国民生活を維持する目的から、企業におけるテレワーク導入の加速や、オンラインでの各種イベントの実施、医療・教育分野におけるオンライン活用の促進につながるなど、図らずも「空気を変える」役割を果たし、デジタル化を推し進める要因となっている。
4 総務省(2020)「社会全体のICT化に関する調査研究」有識者ヒアリング(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 中村伊知哉教授(当時))に基づく。