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第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

(2)IP網時代の公正競争条件の確保

電気通信ネットワークのIP化が進展する中、我が国の基幹的な固定通信網においても、IP網が基軸となってきており、その中で、IP網同士の接続条件等、電気通信事業における競争基盤となる接続等を巡る諸論点について議論、検証が必要となってきている。これを踏まえ、総務省では、2017年(平成29年)3月から、「接続料の算定に関する研究会8」を開催し、多様なサービスが公正な競争環境の中で円滑に提供されるよう、NGN、加入光ファイバ等の接続料の算定方法やコロケーション、接続料交渉の円滑化等について検討を行い、同年9月に第一次報告書を取りまとめた。同報告書を踏まえ、2018年(平成30年)2月に省令改正(電気通信事業法施行規則等の一部改正(平成30年総務省令第6号))等を行い、第一種指定電気通信設備の範囲、接続機能(アンバンドル機能)、及び接続約款の記載事項等に関する規定を見直した。

同研究会では、その後も第一次報告書で挙げられた各種課題への取組状況を中心に議論、検証を継続し、NGNの県間通信用設備の扱い、NGNのISP接続(PPPoE9とIPoE10)、光ファイバケーブルの取扱い(耐用年数等)について方向性の取りまとめを行った。2018年(平成30年)9月には、これらの結果を整理するとともに、フォローアップ事項を提示した第二次報告書を取りまとめるとともに、その後、同報告書も踏まえ、「網機能提供計画」制度について、省令改正(平成31年総務省令第15号)を行い、従来対象外であったIP網を構成するルータ等を対象に追加するとともに、届出期限の短縮など手続ルールの合理化を行った。

さらに、2019年(平成31年)4月に取りまとめられた「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の中間報告書を踏まえ、移動通信における将来原価方式の導入による算定等についても検討を行った。同年9月、同研究会におけるこれまでの検討結果を整理するとともに、今後のフォローアップ事項等を提示するため、第三次報告書が取りまとめられた。

その後、第三次報告書でフォローアップ事項とされたNGNの県間通信用設備の扱い等に関する議論、検証を継続するとともに、2019年(令和元年)12月に取りまとめられた「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」の最終答申を踏まえ、指定電気通信設備を用いた卸電気通信役務のルールについての検討を進めているところである。

また、固定電話網のうち加入者交換機等の接続料算定においては、長期増分費用(LRIC)方式が適用されているが、情報通信審議会答申「平成31年度以降の接続料算定における長期増分費用方式の適用の在り方について」(平成30年10月)において、2019年度(令和元年度)から3年間は、IP網を前提とした接続料原価の算定に向けた段階的な移行の時期として、まずは従来から用いているPSTN-LRICモデルにより接続料を算定し、これにより価格圧搾のおそれが生じる場合は、PSTN-LRICモデルとより効率的なIP-LRICモデルの組合せへ移行の段階を進めることが適当とされた。

この答申を踏まえ、2019年(平成31年)3月に第一種指定電気通信設備接続料規則(平成12年郵政省令第64号)を改正し、接続料算定の段階的な移行に係る規定を追加した。

さらに、2019年(令和元年)6月には、IP網への移行後を見据えつつ、2022年度(令和4年度)以降の接続料算定に適用し得るLRICモデルの検討を行うため、長期増分費用モデル研究会を再開した。



8 接続料の算定に関する研究会:
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/access-charge_calculation/index.html別ウィンドウで開きます令和元年12月に、「接続料の算定等に関する研究会」に名称が改められた。

9 Point-to-Point Protocol over Ethernet:2008年(平成20年)3月のNGN商用サービス開始時から用いられている方式であって、ホームゲートウェイ等の利用者端末と、他事業者との接続用設備である網終端装置の間に、論理的なトンネル(セッション)を構築し、NGN外との通信(インターネット通信等)は他事業者の割り当てるIPアドレスにより全て当該セッションを通過し他事業者の設備との間で伝送されるが、NGN内に閉じた通信(フレッツ利用者間の光IP電話等)は、NGN用の別のIPv6アドレスの割り当てを受けて行う方式。

10 Internet Protocol over Ethernet: NGNにおいてIPv6によるインターネット接続サービスを提供するための一方策として、2009年(平成)21年8月から用いられているもので、NTT東日本・西日本が他事業者に割り振られたIPv6アドレスを預かった上で各利用者端末に割り当てることにより、NGN外との通信も、NGN内の通信も当該IPv6アドレスにより行うことができる方式。

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