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第2部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

3 電波利用環境の整備

(1)生体電磁環境対策の推進

総務省では、安全かつ安心して電波を利用できる環境を整備するための取組を推進している。電波の人体への影響に関しては、電波防護指針12をもとに、電波法令により電波の強さ等に関する安全基準を定めており、その内容は国際的なガイドラインとの同等性が担保されているとともに、電波の安全性に関する長年の調査結果13が反映されている。これまでの調査・研究では、この安全基準を下回るレベルの電波と健康への影響との因果関係は確認されていない。

最近の取組としては、5Gをはじめ、6 GHz を超える周波数帯の電波を利用する無線設備が人体の近くで使用されることを踏まえ、情報通信審議会において「高周波領域における電波防護指針の在り方」及び「携帯電話端末等の電力密度の測定方法等」について審議された。それらの答申(2018年(平成30年)9月及び12月)では、周波数帯が高くなるに従い、電波が人体内部へ浸透されにくくなることを踏まえて、周波数帯が6GHzを超える場合、身体表面の温度上昇に関連する指標(入射電力密度)を用いた基準値及びその測定方法が策定された(図表6-3-3-1)。

図表6-3-3-1 携帯電話端末等の周波数帯による基準値の違い

それらの答申を受け、2019年(令和元年)5月に無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)等が改正された。

電波の利用がより身近になる中、今後も電波の安全性に関する科学的な検証を積み重ねるとともに、電波の安全性を分かりやすく情報提供する14ことが重要である。

総務省では、2018年(平成30年)1月の「生体電磁環境に関する検討会」報告書及び2018年(平成30年)6月の「生体電磁環境に関する研究戦略検討会」第一次報告を踏まえ、2019年度(令和元年度)から、電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用や、新しい無線通信等による小児への影響に関する疫学研究等の新しい研究を実施している。これらの研究を通じて、今後、指針の評価・検証や国際ガイドラインの改定等に反映していく予定である。

また、総務省では、5Gシステム等で使用される電波の安全性について、電話相談、説明会の開催やリーフレットの作成などを通じて国民への周知啓発を行っている。

医療機器への影響については、総務省は「電波の医療機器等への影響に関する調査15」を毎年行っており、2018年度(平成30年度)は、携帯電話端末や無線LAN、無線電力伝送装置からの電波の植込み型医療機器及び在宅医療機器等への影響について調査を行った。今後、当該調査内容を精査し、必要に応じ「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針」に反映させる予定である。

さらに、医療機関における適正な電波環境の確保について、医療機関における電波利用の拡大に伴い無線利用に関するトラブルが増加していることを受け、2017年(平成29年)から各地域の医療機関における電波利用推進地域協議会(事務局:各総合通信局等)を設置し、医療機関における安全な電波利用推進のための周知・啓発活動を行っている。また、「電波環境協議会」と連携し、医療機関において電波管理を担う人材の育成支援(eラーニング教材等の作成)や電波管理の観点からの病院建築のガイドラインの作成支援等の活動を行っている。

さらに、関連した取組として、2017年度(平成29年度)から「無線システム普及支援事業費等補助金」による電波遮へい対策の対象として医療施設を加え、医療機関において携帯電話が安心安全に利用できる環境の整備を実施している(図表6-3-3-2)。

図表6-3-3-2 医療機関における電波遮へい事業のスキーム図


12 電波防護指針:https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/medical/protect/別ウィンドウで開きます

13 総務省における電波の安全性に関する研究:
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/seitai/index.htm別ウィンドウで開きます

14 具体的には、説明会の開催やナビダイヤルの設置、パンフレット作成等を実施:
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/index.htm別ウィンドウで開きます

15 電波の植込み型医療機器等への影響の調査研究:
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/seitai/chis/index.htm別ウィンドウで開きます

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