近年では、パーソナルデータの新たなデータ流通の仕組みについて、パーソナルデータストアやデータ取引市場など様々なものが提唱されているが、中でも我が国における先進的な取組の例として情報銀行の取組が挙げられるだろう。
情報銀行は、個人との契約等に基づき個人のデータを管理し、個人の指示又は予め指定した条件に基づきデータを第三者に提供する事業である(図表3-3-1-1)。
この情報銀行の取組については商用サービスが始まりつつある。総務省及び経済産業省が策定した「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」2に準拠する形で、2018年秋から一般社団法人日本IT団体連盟が情報銀行認定事業を実施しており、サービス実施中の事業を対象とする通常認定及びサービス実施予定の事業に対するP認定を合わせ、2020年3月時点で5社に対して認定を行っている(図表3-3-1-2)。
では情報銀行の事業者はどのようなサービスを提供しているのだろうか。以下にてマイデータ・インテリジェンスの事業を取り上げる。
マイデータ・インテリジェンスでは、マイデータ・バンク「MEY」という、生活者向けの情報銀行サービスを提供しており、2019年7月にはスマートフォンのアプリケーションを公開した(図表3-3-1-3)。このアプリケーションは情報の預託機能、預託した情報を第三者に提供することへの許諾・停止・取消機能、情報の預託・提供履歴機能といった情報銀行の基本機能を有しているほか、利用者に分かりやすいようなシンプルなUI・UXを採用しており、データ提供先や提供項目、利用目的、提供による便益を明示した上で利用者が許諾の判断を行えるよう設計している。
同社としては、「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」3における情報銀行の定義・考え方にもあるように、利用者が情報銀行に個人情報を預託し、データの第三者提供を許諾する場合のメリットとして、利用者に便益を与えることが必要と考えている。そのため、個人のライフスタイルの中で、飲食や勤務などの行動データを情報銀行に預託しやすいよう、利用者が情報を預託することへのインセンティブや、利用者と受け取る便益のマッチングの質をより高めることについて利用企業と相談しているとのことである。
こうした取組に加え、今まで事業者が有していた顧客基盤を情報銀行に集約し、事業者間で情報をシームレスに流通させるための環境として、企業向けプラットフォーム事業の「MDIエンタープライズ」を提供している。
さらに、今後はオプトアウトでの許諾ではなく、利用者が自分自身で提供する情報を判断し、同意するオプトインの仕組みが主流になるとの考えから、情報銀行の機能のうち、許諾管理の仕組みを抽出し、顧客からの個人情報提供の許諾を管理するためのプラットフォームサービスとして同意管理サービス事業も提供している。
1 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/dai2/siryou1.pdf
2 https://www.soumu.go.jp/main_content/000607546.pdf
3 https://www.soumu.go.jp/main_content/000649152.pdf