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第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

(1)2030年頃を見据えた電気通信事業政策の方向性

上記のネットワーク構造の変化及び市場構造の変化により、ネットワークにおける「設備」と「機能」の実質的な分離や、固定通信市場と移動通信市場の融合、海外の事業者が提供するサービスの影響の更なる拡大といった変化が生じることが予想される。このような変化に対し、特別委員会においては、2030年頃のネットワーク・トポロジーを踏まえ、「電気通信の健全な発達」や「国民の利便の確保」を将来にわたって実現・維持する観点から必要であると考えられる施策について、通信ネットワークにおける仮想化の進展、他の電気通信事業者の設備の利用、市場の融合、グローバル化の進展の4項目を中心に、現在のルールの見直しも含めて検討を行い、その取組の方向性を内容とする中間答申1が2019年(令和元年)8月に取りまとめられた。中間答申以降、取組の方向性の具体化に向け、特別委員会の下に新たに、「基盤整備等の在り方検討WG」、「グローバル課題検討WG」及び「次世代競争ルール検討WG」を設置して検討が進められ、以下の政策の具体的方向性が取りまとめられた。

ア 基盤整備等の在り方

現行のユニバーサルサービス制度の対象である固定加入電話は、引き続き国民生活に不可欠なサービスとしての役割を担うことが想定されるが、急速に進行する人口減少や過疎化等の社会構造の変化に対応し、その提供手段の効率化や電話以外の通信サービスの多様化への対応が課題となっている。こうした課題に対し、①メタル回線の維持が極めて不経済となる場合に、NTT東西が、携帯電話網を含む他の電気通信事業者の設備を利用して電話を提供することを例外的に認めるための制度整備を迅速に進めること、②国民生活に不可欠なサービスの多様化を踏まえ、ブロードバンドのユニバーサルサービス化等について、専門的・集中的な検討を進めること等が提言された。

イ グローバル課題への対応

電気通信市場のグローバル化に伴い、我が国においてもプラットフォームサービスが急速に普及しているが、こうしたサービスを提供する国外事業者に対しては電気通信事業法の規律が及んでおらず、我が国の利用者利益などの確保が課題となっている。また、ネットワークの仮想化等の革新的な技術が登場しつつある中で、安全・信頼性の確保といった制度上の課題が生じることが想定される。その一方で、こうした技術の活用を含め、情報通信産業の国際競争力を強化していく観点から、我が国発のイノベーション創出に向けた環境整備が求められている。こうした課題に対し、①国内利用者にサービスを提供する国外事業者に対して電気通信事業法の実効性を強化するための制度整備を迅速に進めること、②ソフトウェアやクラウドを通じて、プラットフォーム事業者などの新たな主体がネットワークの管理・運用を担うことが可能となることを見据え、ネットワークの安全・信頼性や利用者利益を適切に確保するためのルールの在り方について継続的に検討すること、③NTTグループにおける共同調達について、公正競争を阻害しないための措置を講じた上で例外的に認め、調達コストの低減効果を投資に回すことで、研究開発の促進や利用者利益への還元を図ること等が提言された。

ウ 次世代競争ルールの在り方

現行の競争ルールは、事業展開上、不可欠性や優位性を有する設備を他事業者が利用するに当たり、「接続」を中心としてルールの充実・強化を図ってきた。一方で、柔軟な設備利用が可能な「卸役務」の利用が近年拡大し、卸先事業者から、料金などの提供条件の適正性に関する課題が指摘されていることを踏まえ、提供条件の適正性と「卸役務」による柔軟な設備利用のバランスを確保することが求められている。また、今後、事業者間連携が多様化し、「卸役務」の利用が一層拡大することが想定され、移動通信・固定通信市場の融合が進むなど、市場やネットワークの構造が大きく変化した場合、現行の競争ルールでは対応が困難となる可能性も考えられる。こうした課題に対し、①指定電気通信設備を用いて提供される「卸役務」について料金水準の適正性等の検証を行う仕組みを導入すること、②ネットワークの仮想化等の進展に伴い想定される新たな市場支配力に対応した新たな競争ルールの在り方について継続的に検討すること等が提言された。

上記を主な内容とする最終答申2が2019年(令和元年)12月に取りまとめられたことを踏まえ、総務省は、NTT東西によるあまねく電話の役務の持続的な提供の確保、我が国の利用者に対して通信サービスを提供する国外事業者に対する電気通信事業法の実効性の強化等を内容とする電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案を、2020年(令和2年)2月に国会に提出し、同改正法は2020年(令和2年)5月に公布された。

また、基盤整備等の在り方検討WGにおいて議論されたブロードバンドのユニバーサルサービス化等(上記ア②で詳述。)については、2020年(令和2年)4月から「ブロードバンド基盤の在り方に関する研究会」が開催され、制度面を中心に専門的・集中的な検討が進められている。



1 「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」(平成30年諮問第25号)に関する情報通信審議会からの中間答申:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000307.html別ウィンドウで開きます

2 「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」(平成30年諮問第25号)に関する情報通信審議会からの最終答申:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000324.html別ウィンドウで開きます

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