総務省トップ > 政策 > 白書 > 令和2年版 > モバイル市場の競争環境の確保の在り方・消費者保護ルールの在り方
第2部 基本データと政策動向
第2節 電気通信事業政策の展開

(4)モバイル市場の競争環境の確保の在り方・消費者保護ルールの在り方

携帯電話は、その契約数が1億7千万を超え、様々な社会経済活動の基礎となるとともに、国民にとって不可欠なコミュニケーションの手段となっており、利用者が多様なサービスを低廉な料金で利用できる環境整備がますます重要となっている。

モバイル市場においては、現時点において、MNO3社の契約数シェアが均衡しつつある一方で、MNOによる他の電気通信事業者の買収等によるグループ化が進み、実質的に3グループに収れんされている。その中で、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)の契約数は増加傾向にあるものの、直近1年間の純増数はMNOの純増数を下回り、MNO3社の提供する料金プランが横並びとなるような協調的寡占の色彩が強い市場が形成されている。

こうした競争環境下における我が国のモバイル市場については、他の先進国と比較して利用者料金が総じて高く、また、その推移を見ても、下がる傾向が鈍い状態にあることが指摘され、また、端末購入者に対して大幅な割引を行う慣行が広く見られることに伴って、利用者の正確な理解が妨げられ、競争が働く前提である利用者による適切かつ自由なサービス選択が阻害される、利用者間の不公平が生じるという課題が認められる。このような中で、情報通信を取り巻く環境の変化を踏まえ、利用者利益の向上が図られるよう、モバイル市場における事業者間の公正競争を更に促進し、多様なサービスが低廉な料金で利用できる環境を整備するための方策について検討を行うため、2018年(平成30年)10月から「モバイル市場の競争環境に関する研究会」(以下「モバイル研究会」という。)を開催した。

モバイル研究会においては、①事業者間の公正な競争の促進による利用者利益の確保、②利用者のニーズに合ったサービス・端末の選択の確保、③技術進歩の成果を利用者が享受できる環境の確保を検討の基本的視点とし、携帯電話の料金プランに係る理解を促進するための取組などの利用者料金に関する事項と、接続料負担の軽減と予見可能性の確保に向けて接続料の算定方式を将来原価方式へ見直すことなどの事業者間の競争条件に関する事項について、検討を行った。

また、携帯電話に限らず、電気通信分野は急速に技術革新が進む分野であるため、消費者が利用する電気通信サービスは日々高度化・多様化・複雑化し、電気通信サービスを提供する電気通信事業者及び販売代理店と消費者との間には、情報の非対称性等の格差が生じる傾向にある。このような消費者保護ルールの重要性がますます高まっている状況を踏まえ、2015年(平成27年)の電気通信事業法改正により充実・強化された消費者保護ルールの施行状況及び効果を検証するとともに、今後の消費者保護ルールの在り方について検討を行うため、2018年(平成30年)10月から「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWG」(以下「消費者WG」という。)を開催している。

消費者WGにおいては、電気通信サービスの多様化・複雑化や消費者トラブルの現状を踏まえ、①事業者から消費者に対しリテラシーに応じた適切な情報提供が行われているか、②電気通信サービスの品質の不確実性という特性を踏まえた消費者保護が十分になされているか、③利用者のニーズに合ったサービスを選択できる環境が確保されているかという観点から、携帯電話の料金プランの理解促進のための取組、携帯電話ショップでの手続時間等の長さへの対応、広告表示の適正化に向けた対応、不適切な営業を行う販売代理店等への対策、高齢者トラブルへの対応、法人契約者のトラブルへの対応等について、検討を行った。

モバイル研究会及び消費者WGでの議論を通じ、多くの関係者及び構成員が共通して指摘する課題が明らかになってきたことを踏まえ、2019年(平成31年)1月、両会合合同により「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言3」が取りまとめられた。緊急提言においては、「シンプルで分かりやすい携帯電話に係る料金プランの実現」のための通信料金と端末代金の完全分離や行き過ぎた期間拘束の是正、「販売代理店の業務の適正性の確保」のための販売代理店の届出制度の導入や利用者に誤解を与える不適切な勧誘行為の禁止等について早急に取り組むべきとの方向性が示された。これを受け、総務省は2019年(平成31年)3月に電気通信事業法の一部を改正する法律案を国会に提出し、同改正法は2019年(令和元年)5月に公布、同年10月より施行されている。

消費者WGについては、2019年(平成31年)4月に中間報告書、2019年(令和元年)12月に報告書が取りまとめられた。報告書では個別の論点(携帯電話契約の理解促進と負担軽減、不適切な代理店への事業者による指導の強化、保護の強化が必要な利用者(高齢者等)への対応、2030年を見据えた消費者保護の在り方)について整理がなされた。今後、これら論点をフォローアップするとともに、更に検討を深めていく予定である。

モバイル研究会については、2019年(平成31年)4月に中間報告書、2020年(令和2年)2月に最終報告書が取りまとめられた。最終報告書では、改正電気通信事業法の施行後の課題や5G時代への移行やeSIMの普及を見据えた将来的な課題等、今後取り組むべき事項等について取りまとめられた。



3 「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」及び意見募集の結果の公表:
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban03_02000529.html別ウィンドウで開きます

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